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【QAあり】GENDA、日本アニメIPを北米に輸出する巨大プラットフォーマー+キャピタルアロケーションの大転換

投稿:2025/10/17 17:00

北米アミューズメント事業

関本圭吾氏(以下、関本):本日ご登壇いただくのは、株式会社GENDA常務取締役CFOの渡邊太樹さんです。それでは、さっそくお話をうかがっていきたいと思います。

前半パートでは、私から決算の見方と、北米の状況のイメージをご説明しました。本日は北米事業のポテンシャルをおうかがいしたいとテーマ設定をしていました。

渡邊太樹氏(以下、渡邊):ありがとうございます。よろしくお願いします。

関本:国内では街中を歩くとGiGOがあるため、「クレーンゲームがあるな。ゲームセンターだな」とご存じの方はいると思います。しかし、北米で実際に何をやっているのかは、詳しくご存じない方も多いと思うのです。

そのような意味で、北米事業においては、日本と同じようにアミューズメント施設運営を考えているのか、あるいは少し違うビジネスなのか、そもそものビジネスモデルの考え方をうかがえますか?

渡邊:北米事業は日本と少しだけ違いますが、基本的にはアミューズメントです。違いは大きく分けて3つあります。北米事業は、日本のゲームセンターでかかる最も大きな固定費である以下の3つが、大きく異なるビジネスモデルです。

1つ目に、無人ですので基本的には人件費がかかりません。2つ目に、ゲームの機械は小さなクレーンゲームで構成されています。したがって、日本の大型ゲームセンターのように、ビデオゲームを含めたさまざまなゲーム機が並ぶようなものとは異なり、比較的投資が少なく済みます。つまり、結果的に減価償却費が非常に少ないビジネスとなっています。

3つ目が家賃です。日本では固定的な家賃を支払うのが通常ですが、私どもが「ミニロケ」と呼ぶ米国でのビジネスは、売上の一部を家賃としてお返しするような、変動家賃のような形態が主です。

スライドの左側、人が映っている画像は比較的大きな場所で、固定の家賃がかかる契約をしています。右側の小さいスペースの出店は、変動家賃で売上の一部をお支払いしています。基本的に売上と原価は日本のクレーンゲームと同じですが、固定費の部分が大きく異なっており、小回りの利くビジネスといえます。

関本:前半パートでスタッフが常駐しないことに少し触れられていましたが、各エリアに商品を定期的に配備する拠点を持っているのですか?

渡邊:おっしゃるとおりです。簡素化して言うと、自動販売機のようなビジネスモデルになっています。設置して、中身の景品がなくなれば定期的に交換するかたちです。

結果的に、いわば自動販売機のようなかたちで、全米で日本アニメIPを販売できるようなプラットフォームを作ることができたと考えています。

北米プラットフォームの拡大

関本:自動販売機のモデルと考えるとおもしろいですね。そうすると、ドミナント戦略のように数多く設置することにメリットがあるのだろうと思います。今年になって立て続けに北米エリアでのM&Aを行っているのは、やはりそのような面でのシナジーがあるためでしょうか?

反対に、たくさんM&Aすることによるネガティブな点もあるのではと思います。最近、立て続けにM&Aを行っている背景や狙いもおうかがいしたいです。

渡邊:まずは背景からご説明します。2019年に、私どもの子会社であるKiddleton, Inc.(以下、Kiddleton)は、北米でミニロケという業態を始め、独自に600店舗まで伸ばせています。これは、このビジネスが非常に資金回収が早い、すなわち投資額が低いのに対し、売上利益が非常に大きいビジネスであることを示しています。

したがって、北米は1,000店舗、3,000店舗まで店舗数を伸ばせるのではと考えていました。しかし全米は非常に広いため、1店舗出すたびにテナントのオーナーと交渉を行うとなると、実際のところなかなか厳しいものがありました。

そこでミニロケ業態で米国No.1のNational Entertainment Network, LLC(以下、NEN)、スライドでは左上の緑色と白のロゴの会社ですが、この会社がもしグループインしたらすばらしいと思っていました。そのような中、コロナ禍を経てNENが売却を検討しているという情報をつかみ、結果的にEBITDAマルチプル3.6倍という非常に魅力的な価格で会社をお譲りいただけました。

NENは先ほどお見せしたように、大きなクレーンゲームの中にいろいろな米国製のぬいぐるみが置いてあるような状態でした。

日本のゲームセンターは、2006年から2014年まで業界として大きく売上が落ち込みました。しかし2014年以降、今に至るまで、コロナ禍の2019年の1年間を除いて10年連続でクレーンゲームが伸び続けています。結果的に、ゲームセンター各社が過去最高益を連続で更新しています。

翻ってNENを見ると、10年前の日本のゲームセンターそのものです。中身をどんどん日本アニメIPに替えていくことで日本のゲームセンターは伸長したわけですが、NENで同じことを行った結果、売上・利益の伸びが非常に大きくなりました。

具体的には、国内既存店の成長率は年数パーセント程度ですが、M&Aでゲームセンターを取得し、クレーンゲームの中身を良いものに替えた場合、M&A前後で20パーセントから30パーセント成長します。既存のNENも現在1,000店舗弱で入れ替えを行っていますが、成長率は平均してプラス105パーセントという非常に大きな結果が出ています。

これは間違いなく、NENのクレーンゲームの中身が日本アニメIPに変わった瞬間に、現地の方々が非常に遊んでくださっていることを示すデルタだと思っています。

NENのこの状況を見て米国でのPMIは再現性が高いと確信し、より大型の、ミニロケだけではなくゲームセンターも扱うような、私どもが日本で一番得意としている分野に属しているPLAYER ONE Amusement Group, Inc.(以下、PLAYER ONE)の取得に乗り出しました。

PLAYER ONEは、NENの約半年後にグループインしました。M&AはNENの約1年後に行いました。私どもが日本でセガ エンタテインメントのアミューズメント施設をM&Aした後にロールアップで小さいゲームセンターをM&Aしたのと同じようなかたちで、北米でもロールアップM&Aを行い、Barberio Music Company(以下、Barberio)、Venuplus, Inc.(以下、Venuplus)を追加しました。

これはシナジーにも間違いなく効いてくるものです。わかりやすいところで言うと、各店舗に景品を補充する拠点が近場にあると効率よく補充ができます。さまざまな日本アニメIP景品を続々と扱わせていただいている状況ですので、いち早く中身を替えるために活用しています。

さらに、各社で別々に保有していた倉庫も今年中に適切なかたちに統合し、コストシナジーを発揮していこうと思っています。

関本:倉庫のコスト部分は効率化が可能であり、各店舗に景品を入れて回るためのコストも効率化できるということでしょうか?

渡邊:おっしゃるとおりです。

堅実なグローバル展開の進捗

関本:こちらのスライドについて聞きたいところがあります。北米全域について自販機を例に出されましたが、おそらく過去には日本企業があまり持っていなかったチャネルだろうと思っています。つまり、日本アニメIPの北米への輸出窓口としてのチャネルは、価値が非常に高いと感じています。

そこで渡邊さんから、お客さまからの評価、狙いというようなビッグピクチャーをぜひうかがいたいです。

渡邊:関本さんのおっしゃるとおり、私どもにとって歴史的なことだと思っています。

日本の人口が縮小していく中で、日本アニメIPは海外の外貨を取れる、非常に強い日本の産業であることは間違いありません。しかし、オンライン以外のかたちで、米国をはじめ世界中の方々の個人のキャッシュをマネタイズするのが難しかったわけです。

「Netflix」や「Amazon Prime Video」のようなオンライン配信のプラットフォームでは、それでも十分な効果がありますが、やはりプラットフォーマー側が大きな利潤を取っていくという状況が続いていました。

これをなんとか現地で、例えば小売店のようなかたちで日本アニメIPを販売することは行われていましたが、これには難点がありました。それはコストが高いということです。

内装を施して、人を配置して、POSシステムを入れて、棚に陳列してということを繰り返していくと、定価販売にはあまり経済合理性がありません。もしあったとしても、ニューヨークやロサンゼルスのような人口の多いところでなければ難しかったわけです。

日本も似たような状況でした。アニメグッズが売られている専門店はありますが、ゲームセンターのように勃興してはいませんでした。むしろ、どちらかというと集約されていく傾向があったわけです。

ゲームセンター市場は、先ほどお伝えしたとおり、クレーンゲームが10年連続で伸びている状況です。私自身もそうなのですが、アニメIPが好きな方は、景品を苦労して取ったという体験価値が、「推し活」といったアニメIPを愛する活動と非常に合うのではないかと考えました。

特に、北米で展開しているミニロケは人件費もかからないため、固定費の大きな節約になります。ミニロケは北米で日本IPをマネタイズするときに、コストを抑えつつ売上も見込めるという観点で、経済合理性が合致していました。私どもは日本の企業として初めて全米の消費者に日本アニメIPを直接販売できるチャネルであるミニロケを展開したということです。

ラウンドワンも大型店舗を50店舗運営されています。日本のIPを米国でしっかり消費者に直接販売し、しかもオールジャパンでその利潤を取っていく、この活動自体は非常に大きな注目を集めています。現在、政府の省庁も非常に注目しており、さまざまな議論を行っています。政府系の金融機関も含めて、この活動には非常に注目していただいています。

「日本国として、日本の強い産業でなんとか外貨を稼ぎたい。それをオールジャパンで行いたい。そのような活動にチャレンジしている会社を応援したい」とおっしゃっているため、私どももぜひその一翼を担えたらなと思っています。

関本:日本IPの強さとチャネルを合わせると、大きなポテンシャルがあるのではないかと思っています。

渡邊:おっしゃるとおりです。

北米事業のPMI施策

関本:その1つの表れが、PMI施策としてのSWAPとAdd onだと思っています。店舗の売上が50パーセント、100パーセント成長するなど、日本の飲食業やアミューズメント施設では考えられない水準で伸びています。なぜこれほど伸びているのでしょうか?

渡邊:理由を推論すると、日本で起きていることと同じことが起きているのであれば、やはり景品である日本アニメIPが人気であるということです。もともとの景品の人気度合いと、私どものM&A後に導入した景品の人気度合いが大きく異なるということだと思っています。

国内の既存店舗の成長率は数パーセントです。この数パーセントというのは、まったく同じお店で昨年と今年とを比較して、どのぐらい伸びたかということです。それを踏まえると、成長しつつも大きなプラスアルファはないだろうということがわかります。

ただし、国内の別のゲームセンターをM&Aしたケースでは、例えばもともと10店舗のゲームセンターを持つ事業者が私どもの店舗に加わり、400店舗から410店舗のゲームセンターグループになったとします。

私どもはゲームセンターシェアNo.1として、よく売れるさまざまなアニメグッズやアイドルグッズを入れていますが、10店舗の小さなゲームセンターは必ずしもそれらのグッズを扱えていないわけです。「ここにある景品を、すぐに倉庫にあるものと入れ替えましょう。さらに、店舗施設もGiGOブランドのクオリティとして出すと売上が大きく上がりますよ」と言っています。

北米事業のPMI施策では日本のゲームセンターM&A事例と同じことが起きているのではないかと考えています。つまり、もともとの米国におけるクレーンゲームの景品は、特定のIPではなくいろいろなモンスターのキャラクターのぬいぐるみなわけです。

なんとなく想像できると思いますが、「景品を取りたい」というよりは、「取れるかどうかを楽しむ」という、ピュアなクレーンゲームの遊び方です。これはまさに2014年より昔の、日本のゲームセンターの状況でした。

そこからの伸びを考えると、やはり日本のアニメIPは非常に人気があります。私は2日前まで北米でIRを行ってきましたが、やはり現地の方々の日本アニメIPに関する熱量の高まりは、日本の投資家とお話しするよりも、よほどビビッドに感じられます。

今、『鬼滅の刃』の映画が絶賛上映中ですが、その放映前に『チェンソーマン』などさまざまなアニメの広告が入ります。そのような日本のアニメを現地の若い方々がすべて知っていることに、現地の投資家たちは驚かれていました。

実際にデータを取ってみると、Z世代では4大スポーツよりもアニメのほうが人気という結果が出るなど、米国での日本アニメに対するポテンシャルを非常に感じています。それが最終的な数字として出てきているのではないかと思っています。

関本:御社が景品を入れ替える前のクレーンゲームに魅力がないと言ったら失礼ですが、日本のクレーンゲームに入っているようなIPのフィギュアやぬいぐるみに入れ替わった時の魅力は、日本よりも現地の人のほうがさらに強く体感しているのでしょうね。

PMI施策の進捗

関本:平均売上成長率がSWAPでプラス105パーセント、Add onでプラス46パーセントというのは非常に大きいことだと思います。

しかし、投資が嵩んでいるようでは意味がありません。ROICやIRRというような、投資対リターンのような指標ではどのように見えていますか?

渡邊:PMI施策を進めながら1,000店舗を運営していろいろな学びがあり、反省がありました。その反省はすぐに活かしています。

売上が105パーセント伸びる、つまり2倍になるならば、全店舗で行ったほうが良いと思っていました。ところが売上規模が小さい店舗もあるわけです。売上規模が小さい店舗では売上が2倍になっても、投資のコスト割れをしてしまうのです。

つまり出したキャッシュを回収できず、減損が起きてしまいます。これはM&Aでもゲーム機でもまったく同じ減損ですので、絶対にしてはいけません。

極端に言えば、年間1ドルしか売上のない店舗が年間2ドルを売り上げるようになっても、売上成長率105パーセントと出るわけです。ところが、実際にはゲーム機を入れ替えて、景品を入れ替えてというようなオペレーションをしていますので、浮上効果が1ドルしかないのでは投資対効果が合いません。このようなことを考えながら投資しています。

ゲーム機は少なくとも7年間くらいは使えます。メンテナンスをすることで、実際には10年くらい使用できます。私どもは7年間で、どのくらいの回収率を出すべきかというハードルレートを設けています。

そのハードルレートは厳しめに設けており、まずは高い店舗から入れ替えを実施しています。結果的に105パーセントという数字は出ていますが、その実で言えば、投資対効果が高い店舗から順に入れ替えを行っていくようにしています。

現在、北米のミニロケ拠点は1万3,000箇所ありますが、例えばNENの1万箇所の中では、実際に投資すべきところは4,000箇所程度と考えています。

一方で、Add on実行中のPLAYER ONEは少し性質が異なり、投資効率が非常に軽いため、積極的にやるべきと考えています。

関本:Add onは空きスペースに置くだけですので、撤去のような大きな工程が入ってこないということですか? 

渡邊:おっしゃるとおりです。そこがまさにポイントで、SWAPとAdd onとの大きな違いです。SWAPはもともとそこにあるものを撤去しなくてはいけません。

そのため、SWAPは実際に投資する際、つまりクレーンゲームの機械を買って設置する時に、投資したお金を回収する原資は、新しい機械からの回収原資はもちろんなのですが、もともとなにもしなくてもキャッシュが回収されていたゲーム機を撤去して設置しますので、撤去分を補った上で投資を回収していくかたちになります。

渡邊:対してAdd onは、前のスライドで言えばゲームセンター内の黄色い枠の部分ですので、撤去する必要がないわけです。ただ空きスペースに置いて、純粋にこの新しい機械の売上だけを回収するため、投資効率がさらに良いわけです。こちらを今、優先して進めています。

関本:回答が難しければ非開示で構わないのですが、SWAPとAdd onは何年くらいで回収できるといった見通しはあるものなのでしょうか? 

渡邊:ロケーションによってそれぞれですが、私どもがKiddletonで始めた頃は、半年から1年で回収といった数字が出ていました。IRRとして、200パーセント、100パーセントが成り立つ世界だったわけです。

SWAPについては実際に入れ替えていますので、私どもとしては、少なくとも4年で回収できると思われるところにだけ置くようにしています。4年が最遅のケースですので、1年、2年、3年、4年の間で回収できるところを狙っているというかたちです。

PLAYER ONEも目処は同じですが、理論上、同じような売上の力を持てる箇所であれば、Add onのほうが早く回収できると考えています。

関本:なるほど。詳細な年数までありがとうございます。1年、2年での回収はすごいことですね。

渡邊:Kiddletonが1店舗から600店舗まで拡大できたのは、まさにここが原動力です。通常は600店舗というと、かなり大型のファイナンスが必要かと思いきや、自社のキャッシュフローがかなり回るため、大きく増やすことができました。

ご案内のとおり、トランプ関税があり、私どもがPLAYER ONEの子会社化を発表した時には、米国の対中関税は100パーセント、150パーセントという状況でしたが、今は30パーセントに収まっています。

この30パーセントがなくなると、SWAPやAdd onの投資回収はさらに早くなります。30パーセントが起きる前のKiddletonは、半年回収が成り立っていた世界でした。こういったところはまだアップサイドとして残っていると思いますが、いずれにせよ非常に良いことには変わりがありませんので、継続していく方向で考えています。

順調な進捗と今後の成長戦略

関本:SWAPとAdd onの効果が表れていると個人的に思ったところが、この四半期でWalmartへの新規出店の再開は想定外だったというお話です。この背景には、「御社がSWAPとAdd onをすると非常に売上が上がるから、もっと出店してよ」ということかと想像したのですが、このあたりはいかがですか?

渡邊:まさにおっしゃるとおりです。WalmartにはNENが多く出店していました。私どもはNENを3.6倍で取得したとご説明しましたが、これはもともとWalmart側でNENのあまり売れていないミニロケを少しずつ閉店するという流れがあったためです。

徐々に落ちていくような収益構造でしたので、3.6倍というかなり保守的な数字で取得しました。ただ、私どもが中身の景品を入れ替えたところ、2倍売れてしまったということです。

レベニューシェアですので、売上の一部をWalmartにお返しするため、Walmart側の収入が単純に2倍になりました。彼らからすると「それならば意味があるのではないか」ということで、私どももアピールして、最終的にNENに区画出店の打診をいただきました。これは計画に入れていなかったため、非常に大きなブレークスルーでした。

しかも、小さい場所ではなく、スライドで示しているような大きな場所です。Walmartの一部を日本アニメIPの自動販売機の販売所に変えていくことが、私どもが今取り組んでいることです。

Walmartへの出店自体、NENとして7年ぶりです。NENは30年近く業歴のある会社ですが、社内にも非常に大きな影響がありました。

関本:このあたりも、SWAPとAdd on、さらには日本IPのパワーを示しているなと思いました。これをNENでできたというのはすばらしいというのが、先ほどのバリュエーションの話だと思います。

PLAYER ONEの業績推移

関本:一方で、ここも前半に関連しますが、今年のPLAYER ONEの取得価額は過去の案件と比べると少し高いという人もいます。これについてどのようにお考えでしょうか?

渡邊:私どもは通常、EBITDAマルチプルが3倍、4倍、5倍、6倍レンジくらいでM&Aすることが多いのですが、PLAYER ONEについては8.5倍と、相対的に高いM&Aになっています。

これについては、そもそも絶対値として8.5倍は、M&Aの中では比較的割安だと思っています。私どもが通常行うM&Aが非常に割安なのだという認識です。

それを前提として、なぜこの案件は8.5倍でも許されたのかというと、なんといっても取得後の成長が見えていたからです。私どもはM&Aを必ず成功させるべく、一つひとつ石橋を叩くように進めています。

例えば、KiddletonのM&Aをして「これはいけるな」ということで、NENでも「3.6倍であれば」とM&Aし、それでも大きな効果を得ました。

次にPLAYER ONEをM&Aすると、確信的にほぼ全米各地を制圧できるという状況でした。これを一つひとつ進めていくか、M&Aするかで考えると、やはりM&Aは時間を買えるという大きなポイントがあります。

加えて、PLAYER ONEという会社は、もともとCineplexという会社が経営しており、それをPEファンドがM&Aしたわけです。

Cineplexから直接M&Aできればよかったのですが、リレーション上、困難でした。一方でPEファンドはいつか必ず売却するため、私どもですぐにM&Aしました。彼らが買った後、すぐ売っていただいたというかたちです。

もしこれを待った場合、PEファンドの中でもいろいろなPMI施策を行い、ロールアップM&Aをして、倍率をさらに高めてから大型のM&Aとして売却してくる可能性もありました。そのため、私どもの通常よりは高いのですが、十分に抑えた8.5倍というマルチプルで先に取得しました。

PLAYER ONEという会社は、BarberioとVenuplusという、私どもの北米の4つのM&Aのうちの2つを取得しようとしていました。もしも取得されてさらに高値で売られると非常にまずいですので、これだけはまず先に取得させていただいて、残りも取得したというかたちになります。

8.5倍であっても、例えばEBITDAの成長率がまったく違います。成長率が高ければ、結果的に5倍で非常に安定した成長率の会社をM&Aするのと同じような回収期間になると考えています。私の中では、4倍台でM&Aできた場合と同じ結果になるのではというのが、もともとの考えです。

関本:なるほど。中期的計画のところでも、先ほど説明したようなCash EPSに近いところですね。「調整後のれん償却前当期純利益を2倍にします」となっていると思います。

渡邊:そうですね。これについては、北米の中期経営計画で出したとおり、十分、日本アニメIPを活用していけると考えています。

タカラトミーアーツ×GENDA 北米での新たな挑戦

関本:2026年1月期第2四半期で気になったところとして、「タカラトミーアーツ社との提携でガチャマシンを展開していく」というスライドがありますが、あまりご説明がありませんでした。こちらは中期経営計画にかなり含んでいるのでしょうか? あるいは、まだあまり話せるものではないのでしょうか?

渡邊:結論としては、中期経営計画にはあまり織り込んでいません。IPホルダーであるタカラトミー社は、北米市場を開拓することに非常に関心を持っていただいています。私どもが全米のプラットフォームを先に所有することができましたので、これを非常に魅力的に感じていただき、一緒に北米で展開していくかたちとなりました。

先ほどお話ししたとおり、日本アニメIPを米国で日本企業同士で直接折半していくことができますので、非常に楽しみな試みです。

関本:こちらはおそらく始まったばかりかと思いますので、続報が出てきたらお話をうかがいたいと思います。

北米事業における中期経営計画

関本:ここまではけっこう定性的なお話が多かったのですが、次に今回あらためて開示した中期目標の数値について、ぜひお話をうかがっていきたいと思います。

売上高は、2027年1月期から2030年1月期にかけて225億円の増収を計画しています。SWAP、Add onだけでこれくらい伸びるのではないかと考えると、増収幅はもう少し大きくなるのではないかと思います。増収に対してどのように考えているのかを教えてください。

渡邊:先ほどお伝えしたとおり、全部をSWAPするわけではないということと、今SWAPしている部分の売上が全部2倍になるわけではないため、比較的見えているところを積み上げて作った数字です。

このような中期経営計画を出すこと自体が、GENDAとして初めてです。M&Aを行う会社として、「おそらくM&Aをこれだけ実施するから、このような数字になるだろう」という中期経営計画を出すと、非常に割高でも中期経営計画に合わせるためにM&Aしてしまう可能性があるのではないかということで、開示していませんでした。

一方で、今回お出しした北米の中期経営計画に関してはオーガニックのグロースですので、このようなかたちで初めて開示しています。オーガニックのグロースのみで開示することも初めてでしたので、あまり背伸びしすぎず、私どもとしてこれくらいはある程度達成できるのではないかという数字を並べているかたちです。

関本:先ほどお話があった、SWAP、Add onを良いペースで進めていけるところについては取り組んでいくことで、この水準を見ているというところでしょうか? 

渡邊:おっしゃるとおりです。

関本:もう1点気になったところとしては、SWAP、Add onは1店舗の売上が増えるため、日本のビジネスでいうと、限界利益率がけっこう高いのではないかと思います。一方で「売上が225億円伸びたら、さらに利益が伸びるのではないか」という議論も機関投資家の中から出てくるのではないかと思いますが、このあたりはどのように考えていますか? 

渡邊:おっしゃるとおりです。結論としては、投資を行った上での売上増ですので、通常の既存店の成長率とは異なるということが一義的な回答になります。

つまり、メンテナンスCAPEXは一部実施しますが、通常の既存店成長率だけで見ると、基本的には固定費が変わらない中で売上が増えたということです。

固定費が変わらず、変動費があまり出ないビジネスですので、売上増分はほとんど利益になります。したがって、数パーセント伸びても利益が大きく伸びるというのが基本的なビジネスモデルです。

今回の米国における既存店の売上増は、何もせず伸びているわけではなく、新しいクレーンゲーム機を置いていますので、必ずしもApple to Appleではないというのが実態です。

したがって、売上を大きく伸ばせるとは思いますが、利益については通常の日本の既存店成長率と異なるかたちで出るのではないかと考えています。

関本:あくまで投資のコスト負担も含めて、このようなかたちで考えているということですね。

渡邊:おっしゃるとおりです。

キャピタルアロケーションの方針転換

関本:本日は北米事業を中心にお話ししようと思っていましたが、直近の決算でもう少しお聞きしたいところがあります。キャピタルアロケーションの方針転換は、非常に大きなトピックではないかと思っています。

渡邊:そうですね。これは本当に大きなトピックです。

関本:正直に言いますと、M&A以外にも国内のアミューズメント施設に投資するなど、かなり投資を行っているからこそ、キャッシュフローが見えにくいところがあると思います。

これが国内でプラスになるのか、あるいは昨年も今年もファイナンスを行っていますが、これに影響が出てくるのではないかなど、おそらく機関投資家目線で質問が多く来ているところではないかと思います。キャピタルアロケーションの方針転換について、可能な範囲でぜひお話をうかがいたいと思います。

渡邊:これはGENDA創立8年の中でも、一番大きな決断の1つだったのではないかと思っています。GENDAは自分たちで出したキャッシュフローで、初めてM&Aを始めるということです。

逆に言いますと、今まではそれをまったくしたことがありませんでした。つまり、今までのM&Aは基本的に外部の株主さまか銀行に資金を提供していただいていたというのが実態です。

今までは既存事業から出てくるキャッシュフローを既存事業だけでまず使い切り、さらにそれを上回る金額を既存事業に投下していました。つまり、既存事業でもファイナンスが必要という状況でした。実際には過去8年間、自分たちで能動的にそれを選んでいました。

どうしても必要な投資も一部ありますが、必ずしも必要な投資ばかりではありません。EBITDAが今は通年で270億円出てきますが、ここから税金と設備の維持更新といった必要なCAPEXを打っても、十分にキャッシュが残っています。

残ったキャッシュフローをどのように使うかは、4つの選択肢があります。1つはM&Aで、インオーガニックの投資です。2つ目はオーガニック投資で、成長のCAPEXです。

3つ目は自社株買い、4つ目は配当です。企業活動の中でこの4つしか使い道がないため、4つの中でどれを選ぶかという時に、オーガニック投資のCAPEXにかなり大盤振る舞いで使っていたというところがあります。

もちろん良い投資は絶対に行うべきですが、良い投資の定義はなかなか難しいです。いろいろなことに取り組み、特に上場して2年間経ち、さまざまな投資に対して成績をつけていく中で、やはりオーガニック投資を整理しようという流れがありました。

そこで、金額と率の2つの軸で大事なものの優先順位をつけました。結果として残っているのが、M&Aとゲームセンター関連です。

既存事業としては、ゲームセンター関連です。こちらは過去の成績上、率については下手するとM&Aより良いような投資があります。ただし、額としてはM&Aのほうが明らかに大きいです。

例えば、ゲームセンターを1店舗出すのに対して、同じ率で100店舗分のゲームセンターを出したようなM&AができるというのがM&Aの良さだと思っています。これは両立しうるわけですが、この2つを進めていきたいと思っています。

北米のゲームセンターは率としては非常に良いです。M&Aをしのぐような率を出しています。ただし、一つひとつの店舗が小さいです。これをローラーのように進めていきます。

それ以外に関しては、M&Aあるいはゲームセンターを出すのと同じくらいの率を出せるものに限って取り組んでいきたいと思っています。そうではない場合については、成長投資を無理やり行うのではなく、その資金をM&Aなどに活用したいと思っています。

これは、2つの大きな意味を持っています。1つ目は、株式での資金調達の負担がかなり軽減されます。例えば今回、私どもは直近で5月に185億円の新株を調達していますが、今回のフリーキャッシュフローはマイナス約100億円でした。

つまり、EBITDAで出てきたキャッシュフローから税金とメンテナンスCAPEXを引いた後に、さらに思い切り成長投資を打った結果、既存事業だけでマイナス100億円のファイナンスを行わなくてはいけない状況でした。

例えば成りでいけば50億円程度はプラスで出るものですので、マイナス100億円がプラス50億円、150億円くらいのデルタがあります。

前回のファイナンスが185億円と考えると、過去対比で毎年150億円分のプラスがあり、大きなバッファになってくるのがおわかりいただけるかと思います。これが1つ目の大きな意味です。

もう1つは、債権者サイドです。今までM&Aを実施してきましたが、株主と銀行に資金を提供していただいていました。先ほどのご説明が株主サイドのお話で、今度は債権者、つまり銀行サイドのお話です。

今まで私どもは大きくなってきましたが、銀行としても、いわゆる借入余力、デットキャパシティが十分にあったため、資金を連続的に提供してくださっていました。

今、全国銀行協会に登録している銀行が日本に112行ある中で、我々は50行弱から融資していただいている状況です。かなり多くの銀行と取引いただいている中で、その多くが地方銀行です。

多く借り入れしている中で、フリーキャッシュフローがマイナスであるということは、まだ1円も返したことがない状態とも言えます。実際にその気持ちはすごくわかります。

当然ながらM&Aの度にファイナンスすると、返済期限が四半期ごとに来て返済を行いますが、毎回それよりも多く借りているという状況です。

返済履歴はありますが、「それよりも貸しているよね」「やはり返済を始めないと負債の借入余力があっても次にお貸しするのはなかなか難しいです」というのは、フェアな議論だと思っています。

GENDAも、ある意味では少年のような時代から少し成長して、次に自分で少しずつ還元できるような体制を作っていくべきなのではないかということで、社内で議論を尽くし、このような発表を行いました。

キャピタルアロケーションの方針転換

渡邊:今回、自社株買いのこともスライドに載せています。株式の購入は、買うのが自分の会社の株なのか、M&Aによる他人の会社の株なのかの違いでしかないため、割安であるほうを優先していきます。成長投資については、これと同じくらいリターンが出るものについては積極的に行っていく方針です。

配当については、この3つとリターンがまったく異なります。配当のリターンは自分たちの株式資本コストになってしまいますので、対比するとこの3つはリターンがだいぶ出てしまいます。したがって、投資案件が何もない時に初めて正当化されるのが配当だと思っています。

GENDAは初期のスタートアップの状態からティーンエイジャーくらいに成長してきたと思いますが、まだまだいっぱいご飯を食べるような年代ですので、さらに体を大きく強くできる投資がたくさんある状況です。配当を選んでいくことはなかなかないのではないかと今は考えています。

他社株式の買収であるM&A、自社株式の買収である自社株買い、選別されたオーガニック投資の3つを先行していくことを考えています。

関本:かなり複雑な環境なのかと思っています。とてもシンプルに考えた時に、大雑把に見ただけでわかっていない人からすると、「つまり国内の成長ペースを落として、現金をプラスにするということですか?」という質問があると思います。成長ペースは投資で維持していくのでしょうか? 

渡邊:おっしゃるとおりです。2つの論点があると思っています。1つは今おっしゃっていただいたところで、GENDAはEBITDAが毎年60パーセントほど上がっています。非連続な成長が成功していると思いますが、基本的にほとんどがM&Aから来ています。

利益が出ている会社をM&Aしているから売上・利益が上がるという時に、本当に株式価値が上がったのかを見るために、EBITDAとEPSを見ています。

EBITDAの成長はM&Aを止めた時に大きく下がるという性質を持っています。実態的にオーガニックの成長投資を少し変えたところで、これをいきなりゼロにするという話でもないため、全体の成長率への影響は大きくないというのが1つです。

もう1つは、そうは言っても我々は率で絞っているため、良い投資を止めているわけではありません。一番良いものを見ていった時にM&Aとゲームセンター関連が残ったというかたちですので、率が相対的に低かったものを止めます。

相対的に低いとは、投資に対する利益の増益分が少ないということです。使い方としてもったいないところがありますので、これを一番効率的なところに回していきます。全社的な資金負担を減らしながら自分でM&Aできるようになっていき、より連続的なM&A企業の理想的なかたちになっていけるのではないかと思っています。

関本:裏を返すと、全体にたくさん投資している中で、指標における優先度が低いところを効率化していくということですね。この部分を返済に回すなどによって、さらにレバレッジをかけたり、M&Aにつぎ込めたりするはずだということですか? 

渡邊:おっしゃるとおりです。

関本:今後の成長ペースが上がるとは言いませんが、成長が早いところに積極的にお金を使っていくといった転換ということですか? 

渡邊:そのとおりです。

関本:「自社株式の買収」という表現も個人的にはおもしろいと思いました。単純に考えると還元という意味合いになるかしれませんが、そうではないということですね? 

渡邊:そうですね。自社株買いと配当は大きく異なると思っており、割安な時を自分で狙えるのが自社株買いだと考えています。

割安感についてはもちろんいろいろな議論があると思いますが、私どものEBITDAマルチプルは、1年前は12倍、13倍あったものが、7倍、8倍まで大きく下がり、半分強くらいになっていますので、非常に狙いどころかと思っています。

先ほどのPlayer Oneのケースでは、例えばEBITDA8.5倍のものを成長させて、4倍、5倍程度にするというのは、成長が見込まれているからこそ成り立つわけです。

国内で事業承継ベースでM&Aを行っているものは、事業承継であるがゆえに基本的に非常に割安なM&A価格でスタートできます。しかし、これがものすごく伸びるかと言われれば、ゲームセンターは非常に伸びますが、それ以外についてはしっかりと順調な伸びを見せます。

このように考えると、実は私たちのEBITDAマルチプル7倍、8倍というのは、高そうに見えて、国内でのM&Aと近寄ってくるのではないかと思っています。

また、私どもとしては、2030年に750億円のEBITDAを作るところはかなり自信を持っています。今のM&Aのパイプラインや将来的な見込みを含めると、十分達成できると思っています。

それを考えた場合、この水準感は割安という議論ができる1つのポイントかと思っています。昔はM&Aと並列してできませんでしたが、並列してできるのではないかと考えています。

さらに付け加えるのであれば、M&A時にはお金が必要ですので、自社株式に使うとM&Aが止まるのではないかと直感的に思いますが、そのようなことはありません。

なぜかというと、通常であれば自社株買いを行った株式を消してEPSを上げる会社もあると思います。これだけでは自分の会社の株を買って終わりとなりますが、これを消さずにとっておければ、自分たちの株価が上がった時に、M&Aの対価として再利用することができます。

私どもはM&Aを行いますので、単なる現金によるM&Aだけではなく、株式を対価としたM&Aができます。わかりやすく言えば、10億円で購入した自分の株式を15億円で使えたら、5億円分の資金が浮くということが起きるわけです。それがなぜできるかといえば、割安な時に仕入れているからです。

自分たちの株価が割安なのかは、自社の情報をもってわかります。あくまで重要情報がない時に限定されますが、シグナル効果も含めて自社株買いを有効活用していきたいと思っています。

関本:そのような意味では、投資先をより選別して洗練されたかたちになっていき、かつ自社株買いも選択肢として入れられる水準に株価が上がってきたということですね? 

渡邊:おっしゃるとおりです。

関本:なかなか評価が難しそうなタイミングだと思いますが、機関投資家の評価や反応はいかがですか? 

渡邊:大変良い反応をいただいています。なぜかというと、やはりこのような声はすごく上がっていました。

創業間もない食いしん坊な状態から、連続的に海外でM&Aを行っていった会社はたくさん海外にあるわけです。そのようなところをいろいろな機関投資家は見ていたため、「いずれそういうフェーズが来るよね」ということはおっしゃっていただいていました。

株価に非常に追い風が吹いていた頃は、ファイナンスがつくため、それ自体はそこまでハードルにはなりませんでした。今のこの状況は、上場来2倍近くなっていますが、この直近半年間では半額ほどになっており、株主のみなさまには大変ご迷惑をおかけしているところです。

これは本当になんとかしたいと考えて、いろいろなアドバイスを受ける中で、外部の株主さまからのアドバイスも踏まえて、やはり1つ次のフェーズに行くべきなのではないかと考えました。最適解を出せたかと思っています。

質疑応答:M&Aでの「規模の追求」と「良質なバリュエーションでの実行」の兼ね合いについて

関本:「2030年のEBITDA750億円に向けたお話として、規模拡大に応じてさらにM&A案件を上積みしていくと思います。規模の追求と良質なバリュエーションでの実行は、トレードオフになってくるのではないでしょうか?」というご質問です。

どのくらいM&Aで割安かつ成長を突き詰められるのかについて、お考えを教えてください。 

渡邊:本当にすばらしいご質問で、そこがGENDAの1番のポイントだと思っています。結論としては、スライドに示しているとおり、2030年の750億円という目標まではまったく問題ないと思っています。

つまり、質も量も追求できるということです。正確に言えば、このくらいの量であれば質を十分に追求できると考えています。この後はまた懸念ポイントがだんだん出てくるのではないかと思っています。

私どもは「世界一のエンターテイメント企業」を狙っていくため、EBITDAを兆円単位に増やしたいと考えています。そのように成長していく終盤の2035年から2040年近辺は、やはり質だけではなかなか難しいフェーズが来ると思っています。

このような時に両方を追求するためには、やはりシナジーが非常に大事になってくるかと思っています。一方で、750億円までについては、今見えているパイプラインも含めて質を十分に追求できるかと思っています。

関本:こちらは3月に実施した前回のセミナーでも似た話題を扱ったと思いますので、ぜひそちらの書き起こし記事もご覧ください。

【QAあり】GENDA、なぜエンタメ業界に特化したM&Aに勝ち筋があるのか

質疑応答:ファイナンスとしての大型案件の実施について

関本:「キャピタルアロケーションの変更についてです。これまでEBITDAがかなり成長してきました。国内フリーキャッシュフローの黒字化のところで『M&A資金を確保する』というお話がありましたが、今後はファイナンスとしての大型案件はあまり行わなくなるのでしょうか?」というご質問です。

こちらはあまり言及されていませんでしたが、いかがでしょうか?

渡邊:チャンスがあれば行いたいと考えています。750億円までや、それ以降の2040年まででファイナンスを行わないということは決してないと思っています。やはりいいチャンスがあった時に、資金を調達してでも進めるべきものがあれば必ず行うべきだと考えています。

ただし、その必要性が少し遅れてくるということだと思っています。フリーキャッシュフローがずっと赤字のままでは、そのタイミングはどんどん来ますが、同じことをもう少しなだらかなペースで行っていけるかと考えています。

加えて、必ずしもファイナンスではなくても、株でのM&Aはそれにかなり類似した効果があります。

株でのM&Aは2つ良いところがあり、1つは通常のエクイティファイナンスと違って即時に株を使えます。エクイティファイナンスの場合、自分でお金を持って、それを1年以内に徐々に使っていきますが、株でのM&Aであれば即時に使うことができるため、タイムラグが生じません。

もう1つは、使う対価が明確にわかるということです。どのような利回りのものに使われるか、つまりそれはどのようなEBITDAマルチプルで、どのようなPERのもの、そしてどのようなシナジーがあるものに使われるかが一発でわかるという良さがあると思っています。

このようなものを使いながらキャッシュフローを黒字化して、株でもM&Aを行いながら、ファイナンスニーズを減らしていく一方で、取り組むべきものがあれば迷いなく進めていきます。

関本:それはやはり、たびたびおっしゃっているCash EPSを増大させるため、効率が良い投資であれば行っていくというところで考えてよろしいですか? 

渡邊:おっしゃるとおりです。

質疑応答:北米事業における日本IPの導入・収益化の本格化時期について

関本:「北米におけるM&Aについて、日本IPの導入や収益化の本格化は、計画に沿って見ていいのでしょうか? 本格化する時期についてもコメントをください」というご質問です。

渡邊:感覚ですが、本格化は来年1年間を通じたその後だと思っています。なぜならば、既存店の成長が大きく出たことを踏まえて、さまざまなIPホルダーが私どもにIPを託してくださるということをお話しいただいています。順次それを発表しているところですが、イメージとしてはそれがちょうど1年後の来年の夏くらいまで並んでいる状況です。

これらが出てくる前に、すでに売上の良いアップリフトができていますが、これらが出てくると本領を発揮してくれると考えています。

店頭に全部並び切るのは少なくとも来年1年間はかかるだろうと思っています。全箇所に全部きちんと並ぶという観点では、もう少し時間がかかってくるかと思っていますので、ぜひご期待いただきたいと思っています。

渡邊氏からのご挨拶

渡邊:本日は平日の遅い時間にもかかわらずご視聴いただき、誠にありがとうございます。私どもとして、直近は株価で株主のみなさまに非常にご迷惑をおかけしている状況です。こちらについてはさまざまな方策をもって、できることを全部行っていこうと思っていますので、ぜひ末永く長い目で見ていただけるとうれしいと思っています。

繰り返しとなりますが、GENDAはキャッシュフローに徹底して忠実に行っていく会社です。キャッシュフローという最終的なゴールのために、EBITDAやEPSを示しています。来年にIFRSを導入するとさまざまな説明コストが一気に減ると思っていますが、それまで座して待つわけではなく、積極的に先んじて指標を出しています。

いろいろな指標を出していく中で、「このようなものがあったほうがいいのではないか」ということで、付け足し、付け足しで進めていましたが、最近は非常にてんこ盛りになってしまいました。「何を見ていいかわからない」というご指摘もいただくところで、非常に反省しています。

それを踏まえて、来期予想から売上、調整後EBITDA、調整後のれん償却前当期純利益の3つに絞って指標として開示していこうと思っています。経営陣がリソースを割いているKPIは、調整後EBITDA、調整後のれん償却前当期純利益、調整後Cash EPSの3つです。これが伸びていなかったら我々として問題だと思っているような指標ですので、この点を強調しながらIRができればと思っています。

ぜひ、いろいろなご意見をいただければ幸いです。本日は誠にありがとうございました。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:投資家として注目すべきKPIがあれば教えてください。

回答:調整後EBITDA、調整後のれん償却前当期純利益、調整後Cash EPSの3つです。私どもはM&Aによって成長していく戦略ですので、投資家のみなさまに私どもの実力を正しくご理解いただくためには、償却費とM&A関連費用を控除したこの3つの指標をお示しするのがよいと思っています。

この3つに経営陣もKPIのリソースを割いており、これが伸びていなかったら我々として問題だと思っているような指標ですので、この点を強調しながらIRができればと思っています。

<質問2>

質問:現在までエンタメ・プラットフォーム領域でのM&Aが多いですが、今後コンテンツ領域を獲得していく予定はありますか?

渡邊:私どものM&Aは適切なバリュエーションを最優先しています。コンテンツ領域の案件は、プラットフォーム領域に比べてバリュエーションの目線が高いため、現時点のM&A実績ではエンタメ・プラットフォーム領域が多くなっています。

私どもが2040年までにエンタメ企業世界一になる過程において、エンタメ・コンテンツ領域も充実していくと考えています。

<質問3>

質問:M&Aによる収益貢献が業績に反映されるまでの一般的なリードタイムを教えてください。

回答:PMIやシナジー無しで収益貢献するM&Aのみ行っていますので、連結直後から寄与し ます。また、年間フルでどの程度寄与するのかを投資家のみなさまにお示しするため、来期の売上、EBITDA、のれん償却前当期純利益も適時公表しています。

<質問4>

質問:今後もM&Aとは別軸での成長戦略として新規事業に取り組む予定はあるのでしょうか?

回答:上記のキャピタルアロケーションの方針転換のとおり、金額と率の2つの軸で投資に優先順位をつけ、今後は、結果として良い投資として残ったM&Aとゲームセンター関連に優先してキャッシュを割り当てていきます。それ以外の投資に関しては、M&Aあるいはゲームセンターを出すのと同じくらいの率を出せるものに限って取り組んでいきたいと思っています。

新規事業などの成長投資を無理やり行うのではなく、その資金をM&Aなどに活用したいと思っています。これにより、今後の資金調達負担を軽減していきます。

<質問5>

質問:今後はフリーキャッシュフローを黒字化してM&A資金に充当し、資金調達需要を減らすとありますが、具体的にはどの程度になるのでしょうか?

回答: 例えば今までは、年間185億円のEBITDA、つまりキャッシュインから、必要経費である税金とメンテナンスCAPEXを引いた後に、さらに思い切り成長投資を打った結果、既存事業だけでマイナス100億円のファイナンスを行わなくてはいけない状況でした。

上記の「金額と率の2つの軸で効率の低い投資」を止めれば50億円程度はプラスで出るものですので、マイナス100億円がプラス50億円、150億円くらいのデルタがあります。前回のファイナンスが185億円と考えると、過去対比で毎年150億円分のプラスがあり、大きなバッファになってくるのがおわかりいただけるかと思います。

<質問6>

質問:今後のM&A戦略において、注力していく地域や事業分野の方向性を教えてください。北米以外の展開や、新しい事業領域の可能性があればうかがいたいです。

回答:基本的にはバリュエーションを最優先して、良い投資であれば行っていきます。そのため、地域や事業分野はあえて限定していません。ただし、現在展開している地域や事業分野からかけ離れた投資ではなく、近い分野を着実に取り組んでいきます。

<質問7>

質問:2027年1月期に導入されるIFRSは、遡及適用されるのでしょうか? もし遡及適用されるのであれば、いつからの適用になるでしょうか?

回答:2026年1月期期首が移行日となり、2026年1月期および2027年1月期のIFRS財務諸表が並列開示されます。したがって、2026年1月期までは遡及しますが、それ以前の遡及は想定していません。

<質問8>

質問:米国は来年あたり景気後退の可能性があると思いますが、そのような時でも収益はそれなりに確保できるのでしょうか?

回答:「安・近・短(あんきんたん)」なエンタメであるゲームセンターやミニロケは、景況感に左右されにくいのが特徴です。1プレイ1ドルのエンタメであり、高額なレジャーと比較すると下方耐久性が強い安定したビジネスです。

米国のデータはないため、取得可能な日本のデータとはなりますが、コロナ禍という有事の際でも、他のフィジカルなエンタメと比較した際の下方耐久力は大変強いと思っています。

<質問9>

質問:米国でも日本のように景品価格の規制はあるのでしょうか?

回答:全米で統一された規制はありません。一部の州ではクレーンゲームやゲームセンターに関する規制があります。

<質問10>

質問:株主還元方針を教えてください。

回答:企業がEBITDAから必要経費を支払った後、残ったキャッシュフローをどのように使うかは、4つの選択肢があります。1つはM&Aで、インオーガニックの投資です。2つ目はオーガニック投資で、成長のCAPEXです。3つ目は自社株買い、4つ目は配当です。企業活動の中でフリーキャッシュの使い道はこの4つだけと言えます。

自社株買いについては、株式の購入は、買うのが自分の会社の株なのか、M&Aによる他人の会社の株なのかの違いでしかないため、割安であるほうを優先していきます。配当については、インオーガニック投資、オーガニック投資、自社株買いの3つとリターンがまったく異なります。配当のリターンは自分たちの株式資本コストになってしまいますので、対比するとこの3つはリターンがかなり出てしまいます。

したがって、投資案件がなにもない時に初めて正当化されるのが配当だと思っています。GENDAは初期のスタートアップの状態からティーンエイジャーくらいに成長してきたと思いますが、まだまだいっぱいご飯を食べるような年代ですので、さらに体を大きく強くできる投資がたくさんある状況です。

配当を選んでいくことはなかなかないのではないかと今は考えています。他社株式の買収であるM&A、自社株式の買収である自社株買い、選別されたオーガニック投資の3つを先行していくことを考えています。

<質問11>

質問:償却費のうち減価償却費は実際にキャッシュアウトするというお話でしたが、設備更新の費用は実際に掛かるという意味で理解してよいでしょうか。

回答:設備更新の費用つまりメンテナンスCAPEXは、店舗や機械を所有している限り必要な費用です。実際に設備の補修を行うので、キャッシュアウトします。

<質問12>

質問:御社が認識するグロース市場とプライム市場の位置づけと、今回のフリーキャッシュフロー黒字化によるエクイティファイナンス機会の絞り込みとの関連性を教えてください。

回答:私どもは東証グロース市場に上場しています。プライム市場へ移行するためには、私どもの成長の要であるM&Aを止めて審査を受ける必要があります。また、TOPIXの見直しで今後はグロース市場の銘柄も組み入れの対象になります。さらに、グロース市場からプライム市場に移行した場合はコストも上がるため、私どもにとってプライム市場に移行するメリットは無いという状況です。

私どもはIPOと、その後の2度の増資で計3回のエクイティファイナンスを過去に行いました。今後はフリーキャッシュフローの黒字化でM&A資金を確保していくため、エクイティファイナンスの必要性は下がります。

ただし、エクイティファイナンスをまったく行わないのではなく、やはりいいM&Aのチャンスがあった時に、資金を調達してでも進めるべきであれば必ず行うべきだと考えています。M&Aで成長していく私どもをお選びいただいている投資家のみなさまにとっても、それが最善の選択だと思っています。

<質問13>

質問:御社の浮動株時価総額に対する見解を教えてください。

回答:私どもは長期で保有してくださる株主の割合が高いため、常に株価のボラティリティが表れやすい状況であると認識しています。一方で、浮動株の絶対額は、東証グロース市場の銘柄としては決して小さくなく、一定の流動性は確保されていると考えています。

私どもとしては自社株の割安さには言及できませんが、現在のEV/EBITDAが7.1倍という水準は、私どものM&Aでのバリュエーション(約5倍)と比べると高いです。しかし、私どもの高い成長率を考慮すると、来期にはEV/EBITDAが4.4倍、PERが10.6倍となる水準であり、M&Aよりも有利な投資機会となる可能性があると考えています。

<質問14>

質問:ROICが徐々に低下しているのはなぜですか?

回答:2025年1月期以降法人税支払いを開始し、ROICとROEの分子が正常化しました。法人税を支払っていなかった時代のROICの30パーセント台からは低下した一方、依然として堅調な水準を維持しています。

<質問15>

質問:申真衣氏が社長退任した理由を教えてください。

回答:前社長である申は以前から、長期的な視点に立ち、企業が持続的な成長と企業価値の向上を図るためには、組織の硬直化を避けるべく経営体制の新陳代謝が必要と認識しており、組織の発展のために適切なタイミングで経営体制の移行を進めることが重要であると考えていました。

そのため、GENDAがM&A企業として一定の戦略の型が確立したタイミングで、このサイクルを未来へ向けて執行する新たな成長フェーズへ最適な経営体制へと移行しました。上場時から変わらない戦略のもとでさらなる成長が見込まれるなか、リーダーシップの変更は、事業が堅調な時にこそ行うべきと信じ、前期末のタイミングで経営体制を変更しました。

申の社長退任後は、創業以来すべてのM&Aを統括してきたCSO羽原と、上場前からIRを含むファイナンスをリードしてきたCFOである渡邊が、全社をリードする立場となり、変わらない戦略の中でさらなる成長を目指し職務を遂行しています。

<質問16>

質問:競合他社はどの企業ですか?

回答:「エンタメ業界での連続的なM&A」を行っている競合他社はいないと認識しています。日本でレガシービジネスを連続的にM&Aしている企業としては、株式会社SHIFT、株式会社技術承継機構、ジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社、株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングスなどがあると認識しています。

<質問17>

質問:今後もイオンを含めた商業施設、レジャー施設などに出店を増やす計画はあるのでしょうか?

回答:ゲームセンターの新規出店については、どのロケーションを重点的に行うかあらかじめ決めるのではなく、良い引き合いのある場所に出店しています。イオンを含めた商業施設でも、オーナーさまと私ども双方にとって良い案件があれば出店していきます。

<質問18>

質問:北米でカプセルトイを展開している競合他社はいるのでしょうか?

回答:日本の大手ベンダーで全米にカプセルトイを展開している競合他社はいないという認識です。

<質問19>

質問:御社が政府に求めたい支援を具体的に教えてください。

回答:日本コンテンツの海外展開に特化した低金利の融資や、コンテンツを適切に保護するための権利の整備、さまざまな地域のビジネス環境の調査、ビジネスマッチングプラットフォームの構築などです。

<質問20>

質問:ゲームセンターの景品の売れ残りの在庫はどのような処理をしますか?

回答:定常的に減損処理し廃棄しています。

<質問21>

質問:日本の女児向けIPは北米で需要はあるのでしょうか?

回答:「Netflix」などの配信プラットフォームの拡大に伴い、日本のコアなアニメの認知度も徐々に高まっているかと思います。私どもでは、まずは北米でも人気の高いメガIPから展開しています。

<質問22>

質問:日本のアニメIPだけでなくゲームIPも北米で展開しないのでしょうか?

回答:ゲームなどの日本のコアなIPの認知度も高まっているかと思います。私どもでは、まずは北米でも人気の高いメガIPから展開しています。

配信元: ログミーファイナンス

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