リンナイのニュース
【QAあり】リンナイ、売上・各段階利益で過去最高達成 各種費用高騰による消費低迷が続く中、高付加価値商品を中心に伸長
浴室暖房乾燥機の使用中止と無償点検・修理のご案内

内藤弘康氏(以下、内藤):代表取締役社長の内藤です。2024年度期末決算に関するご説明の前に、4月15日に公表したリコールについてご説明します。
製造から10年以上経過した浴室暖房乾燥機において、経年劣化故障により、ごく稀に発火に至るおそれが判明したため、無償点検・修理を行うことを決定しました。対象台数は37万2,398台、業績への影響額は25億4,000万円となっています。業績の影響額は、リンナイ単体に営業費用として、2025年3月期に計上しており、つまり2024年度の決算に織り込んでいます。
2024年度 連結決算要点

2024年度の連結決算要点です。各種費用の高騰による消費低迷が続く中、高付加価値商品を中心に伸長しました。売上高は、パンデミックによるサプライチェーンの分断や受給環境の乱れが正常化し、過去最高の4,603億1,000万円となりました。前期比プラス7.0パーセントとなり、こちらも過去最高です。
営業利益は、各種コストが増加する中、増収効果と原価低減活動の徹底により過去最高利益を達成しました。460億円で前期比プラス16.9パーセント、利益率10.0パーセントと、こちらも過去最高です。
経常利益は、為替差損を計上したものの、金利上昇により受取利息が増加しました。503億2,000万円、前期比プラス9.2パーセント、利益率10.9パーセントと、こちらも過去最高です。
当期純利益は296億9,000万円で、前期比プラス11.3パーセント、利益率6.5パーセントと、こちらも過去最高でした。売上高、営業利益、経常利益、当期純利益のすべてが過去最高となりました。
連結業績推移

スライドには、売上高、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益の推移を棒グラフで掲載しており、いずれも右肩上がりとなっています。
2024年度 機器別売上高の内訳

機器別売上の内訳です。一番大きなボリュームゾーンは、給湯です。構成比は全体の60.3パーセント、増加額はプラス138億9,000万円、増減率はプラス5.3パーセントとなりました。
厨房の構成比は20.9パーセントで、金額は962億6,000万円、増加額はプラス57億7,000万円、プラス6.4パーセントでした。
空調はボリュームが減り、構成比は4.8パーセント、売上は220億1,000万円でプラス2億6,000万円の増加、増減率はプラス1.2パーセントでした。業用は少ないため、割愛します。
その他は、525億7,000万円の売上で、構成比は11.4パーセント、プラス96億8,000万円で、増減率はプラス22.6パーセントです。その他にはガス衣類乾燥機の「乾太くん」が含まれており、こちらの伸びが非常に大きく影響しました。
合計は4,603億1,000万円、増加額はプラス301億3,000万円、増減率はプラス7.0パーセントとなりました。
2024年度 連結セグメント別 損益実績内訳

地域ごとのセグメント別損益実績内訳です。日本は一番多く、売上高2,037億3,000万円、営業利益223億円、営業利益率11パーセントとなっています。
アメリカでの売上高は664億5,000万円となりました。一昨年までは在庫の問題があったことで非常に不連続な結果となり、数値的にあまり良くありませんでした。昨年は正常に戻ってきたため、売上高は前期比14.8パーセント増、営業利益は21億3,000万円、営業利益率は3.2パーセントとなっていますが、まだ物足りないと思っています。
オーストラリアは売上高が366億円、営業利益率が3.1パーセントとなっています。こちらは現在、電化の波が厳しくなっています。当社はガスだけでなく、ヒートポンプの給湯器も販売して対応を進めています。そのため、電化への対応として内製化を進めることで、利益率が上がってくるのではないかと期待しています。
中国は景気の動向が今ひとつで、売上高がマイナス4.6パーセント、営業利益がマイナス16.9パーセントとなっています。一方で営業利益率は10パーセントを大幅に超え、14.7パーセントです。売上高が減るなか、しっかりと利益を上げており、赤字からはほど遠い状況ではあるものの、前年よりは減益となりました。
韓国は売上高が347億1,000万円ですが、利益率が非常に少なく、2.7パーセントとなっています。こちらも巻き返しを図っていきたいと考えています。
インドネシアは、売上高自体は170億1,000万円と小さく見えますが、営業利益は38億4,000万円で前期比プラス39.9パーセント、営業利益率は22.6パーセントと、非常に稼いでいます。比較的安価なテーブルコンロが中心ですが、現在は高価格なビルトインタイプに移行していく時期のため、しっかりと対応していきたいと思っています。
2024年度 連結営業利益分析

連結営業利益の分析です。前年度の営業利益は393億6,000万円でした。利益のプラス要素としては、国内増収影響のプラス111億1,000万円、海外子会社増収影響のプラス72億1,000万円がありました。
国内固定費増はマイナスに働き、マイナス53億2,000万円です。海外固定費増もマイナスに働き、マイナス87億円となっています。原材料費の影響は高止まりしているため、マイナス23億1,000万円でした。
また、原価低減努力によりプラス46億5,000万円となった結果、2024年度の営業利益は460億円、前期比増減額はプラス66億4,000円となりました。
日本 セグメント 2024年度 実績

日本セグメントです。直近で大きく販売が伸長している商品としては、付加価値が非常に高いガス衣類乾燥機、ハイブリッド給湯器があります。特に、ハイブリッド給湯器は苦節15年ですが、付加価値が高い商品として伸びてきています。スライドには記載していませんが、ウルトラファインバブルの給湯器およびマイクロバブルの給湯器も付加価値が非常に高い商品であり、かなりの勢いで伸びています。
その結果、売上高は前年比プラス5.9パーセントの2,037億3,000万円、営業利益は223億円、営業利益率は11.0パーセントでした。
スライド右側のリンナイ単体の売上高は、2,346億8,000万円です。営業利益は187億2,000万円、営業利益率は8.0パーセントです。グループ間の売上の消去があるため、スライドの左右で数値が異なります。
スライドの右下には、国内の販売台数を記載しています。給湯暖房機は床暖房や浴室暖房乾燥機をつけられる非常に複雑な商品で、前年比プラス3.4パーセントとなっています。ハイブリッド給湯器は、プラス39.4パーセントです。これまでずっと付加価値を牽引してきたビルトインコンロは、直近ではあまり元気がありません。ガス衣類乾燥機も付加価値が非常に高い商品で、プラス16.0パーセントとなっています。
ハイブリッド給湯器とガス衣類乾燥機のほか、スライドには掲載していませんが、ウルトラファインバブルとマイクロファインバブルの給湯器は非常に付加価値が高くなっています。
アメリカ セグメント 2024年度 実績

アメリカセグメントです。スライド左側のセグメント対象会社とスライド右側の主要会社の数字がほぼ同じのため、まとめてご説明します。リンナイアメリカは、昨年に新型コンデンシング給湯器を投入し、販売が非常に伸びました。従来型のノンコンデンシング給湯器は、現地で生産しています。コンデンシング給湯器に比べると少ないですが、それなりに増えています。
ご参考までに、DOEというアメリカのエネルギー省の長官がジョージア州グリフィンにあるリンナイアメリカの工場を訪問し、4局から5局のテレビで報道されました。ノンコンデンシング給湯器はアメリカで生産していますが、実はバイデン政権時はアメリカで販売できなくなるおそれがありました。しかし、トランプ政権になり、状況が一転しました。これは、非常に大きな影響があります。
日本から輸出している鉄とアルミを使う部品には各含有量に対して関税がつきますが、売価は3パーセントアップ程度に止めています。そのため、再び売れ始めるのではないかと考えています。コンデンシング給湯器はすべて日本から輸出しているため、24パーセントの関税がかかる可能性があります。しかし、関税に関する状況は流動的であるため、来期の計画は当初の予定どおりの数値を掲げています。
売上高は664億5,000万円で前年比14.8パーセント増、営業利益は21億3,000万円です。営業利益率はまだ3.2パーセントとなっていますが、早期に5パーセントを超え、将来的には2桁まで伸ばしたいと考えています。
販売台数は、タンクレス給湯器全体で前年比7.0パーセント増加しました。中でも付加価値の大きいコンデンシング給湯器は、プラス25.7パーセントの伸びでした。
中国 セグメント 2024年度 実績

中国セグメントです。中国についても、対象会社と主要会社をまとめてご説明します。
2023年度は売上的には伸びましたが、景気停滞が続いており、不景気の波によって2024年度の売上高は658億6,000万円、前年比マイナス3.0パーセントとなりました。営業利益は前期比マイナス16.8パーセントでしたが、赤字になったわけではなく、営業利益率は13.7パーセントとなっています。
そのため、さらにコストダウン仕様を続けて赤字に突入することは、当面ないだろうと考えています。景気が上がって反転してくれば、利益が出てくると想定されることから、楽しみにしています。
オーストラリア セグメント 2024年度 実績

オーストラリアセグメントです。オーストラリアは電化の波が厳しく、メルボルンのビクトリア州で家を新しく建てる時はガスの配管を敷設してはいけないという、とても厳しい法令が通りました。ガス機器市場は、間違いなく縮小していきます。
そのような状況のなか、主力のガスタンクレス給湯器販売は、厳冬であったため横ばいとなりました。気候変動・天変地異が起こると、過去に販売していたものが売れる傾向があります。大雨などの災害が発生するたびに若干復活しますが、大きな流れとしては電化の方向へと向かっているため、電化対策を行っていきます。
スライドに記載のとおり、電化に対応した企業買収が増収に寄与しました。具体的には、太陽光発電システムと蓄電池などを組み合わせ、エネルギーソリューションを提案・施工するSmart Energyという会社が増収に寄与しています。
電化比率の高まりにより、利益率は低下しています。オーストラリアの工場で内製率の高いヒートポンプ給湯器を生産できるようになると、利益率がもう少し上がってくるだろうと考えています。企業買収の影響もありますが、売上的には伸長を続けており、売上高が367億1,000万円、営業利益が12億7,000万円、営業利益率が3.5パーセントと、少し厳しい数字となっています。
韓国 セグメント 2024年度 実績

韓国セグメントです。売上高は約350億円、営業利益は9億3,000万円、営業利益率は3パーセント弱と、非常に厳しい数字になっていますが、今期はボイラーの新製品の発売を予定しています。コスト的にかなり期待できるため、業績に寄与してくれるのではないかと考えています。
ガスコンロは、今までSKマジックという会社と競合していましたが、そちらを京東ナビエン社が買収し、厨房市場に参入しました。事業譲渡の隙を突いたことで、売上高が前期比で大きく伸びました。ガスコンロだけでなく電気コンロも展開しており、こちらも注力していきたいと思います。
インドネシア セグメント 2024年度 実績

インドネシアセグメントです。インドネシアはテーブルコンロが売上の主体ですが、最近ではビルトインコンロが売れ始めました。テーブルコンロも利益率が高い商品でしたが、ビルトインコンロの利益率はさらに高いため、大事に育てていきたいと考えています。
売上高は177億円、営業利益は38億4,000万円、営業利益率は21.7パーセントと、しっかり稼いでくれています。スライドに記載のとおり、テーブルコンロはサチレートしており、前期比プラス3.2パーセントです。
ビルトインコンロは伸びており、前期比プラス17.2パーセントです。海外ではビルトインコンロが売れると、自動的にレンジフードも売れていきます。そのため、両方の伸びが大きくなっており、楽しみな市場だと考えています。
連結損益 2025年度 計画

2025年度の計画です。2024年度の売上高4,603億円に対し、2025年度の計画は4,700億円です。営業利益は460億円でしたが、2025年度は500億円を目指します。ROEは7.5パーセントでしたが、2025年度は8.0パーセントを目指します。
ROICは、12.0パーセントを目指します。こちらは、新型コロナウイルス感染症による世界的なサプライチェーンの分断によって、日本で2年前に納入遅延を発生させてしまい社会問題になったことがあったため、再び同じようなことが起こらないよう、部品在庫も商品在庫も多めに持っていることが影響しています。徐々に在庫水準は低くなっていますが、さらに減らすべく、最適な在庫管理をしていきたいと思っています。
2025年度 連結営業利益 増減計画

スライドには、連結営業利益を460億円から2025年度に500億円を目指す、利益の配分について掲載しています。
国内増収影響がプラス34億円、海外子会社増収影響がプラス4億円、国内固定費増がマイナス30億円、海外固定費は減少を狙っており、プラス5億円となっています。また、原材料費はまた上がるだろうと予測してマイナス30億円、原価低減努力他でプラス57億円としています。
以上の結果、営業利益が500億円、前期比増減額がプラス40億円を目標にしたいと考えています。
リンナイ単体 2025年度 計画

リンナイ単体の2025年度計画です。売上高は、前年比プラス3.5パーセントの2,430億円が目標です。営業利益はプラス17.5パーセントの220億円、営業利益率は9.1パーセントを目指したいと思っています。
販売台数の計画では、床暖房や浴室暖房乾燥機をつなげる熱源機となる給湯暖房機はプラス2.9パーセント、ハイブリッド給湯器はプラス37.9パーセント、ビルトインコンロは苦しく、プラス1.1パーセントです。ガス衣類乾燥機は、プラス10.3パーセントを目標としています。
リンナイアメリカ 2025年度 計画

リンナイアメリカの2025年度計画です。関税を含む通商政策が不透明な中、環境意識・規制の高まりから、高効率なタンクレス給湯器市場は成長すると予測しています。また、積極的な販促施策を実施する一方、現地工場のさらなる生産効率の向上により、利益率は改善を計画しています。
2024年度の売上高は664億5,000万円でしたが、2025年度は売上高681億5,000万円、プラス2.5パーセントの計画です。営業利益は30億6,000万円、営業利益率は4.5パーセントを目指したいと思っています。
販売台数計画では、タンクレスガス給湯器はプラス2.8パーセントに加え、コンデンシングタイプを大きく伸ばす計画で、プラス8.1パーセントとしています。
上海林内 2025年度 計画

上海林内の2025年度計画です。市況回復は悲観的な見通しですが、政府による高効率商品への補助金を追い風に、主力である「PF2.0給湯器」の構成比率向上を推進していきます。こちらは、コストダウン仕様のものです。
付加価値が高い商品が揃っており、販売比率をさらに引き上げていきたいと考えています。市場ニーズである大火力や大風量に合わせた厨房機器の新製品により、厨房ブランドの認知向上を目指します。厨房はまだ少ない状況ですが、新製品による再参入に尽力したいと思います。
売上高は、前期比マイナス8.3パーセントの604億円、営業利益はマイナス6.2パーセントの84億5,000万円、営業利益率は14.0パーセントを目指していきたいと考えています。まだ数が少なく偉そうなことは言えませんが、ビルトインコンロは前期比プラス40.6パーセントを目指していきます。
その他の主要海外子会社 2025年度 計画

その他の主要海外子会社の2025年度計画です。リンナイオーストラリアは売上高プラス4.2パーセント、営業利益率5.5パーセントの目標です。リンナイコリアは売上高プラス6.8パーセント、営業利益率は4.1パーセントを目指します。
リンナイインドネシアは売上高3.7パーセント増の183億6,000万円、営業利益42億9,000万円、営業利益率23.4パーセントを目指していきたいと考えています。
設備投資・研究開発

2024年度の設備投資実績は163億円でした。2025年度は、199億円の投資を行います。減価償却費は昨年よりも少なく、研究開発費をぐっと伸ばしていきます。
主な設備投資の計画について、日本では新規領域への投資となります。これからはヒートポンプ給湯器を伸ばしていかなければならないため、主にこちらへの投資です。
海外は、オーストラリアで本社・工場・倉庫機能の集約化を図っていきます。スライド右側に掲載した設備投資等の実績推移のグラフのとおり、研究開発費は一貫して伸び続けています。
中期経営計画「New ERA 2025」の振り返りと25年度 計画

4年前に立てた中期経営計画「New ERA 2025」の振り返りと、次期中期経営計画に向けた計画についてご説明します。中期経営計画は、事業規模の拡大、企業体質の変革、社会課題解決への貢献の3つの柱で進めてきました。
当時掲げた連結売上目標は4,500億円、営業利益は500億円、投下資本効率(ROIC)は19.0パーセント、総還元性向(5年平均)は40パーセントでした。ROEは8パーセント、配当性向は40パーセントを、期間中に追加しています。また、「生活の質の向上」貢献商品は2020年度売上高比で100パーセントアップとなり、途中で目標を上方修正しました。「地球環境」貢献商品も70パーセントアップ、CO2削減貢献量は820万トンと、再度設定し直しています。
中期経営計画の最終年度となる2025年度は、売上は200億円をプラスし、4,700億円とし、その内訳は国内2,020億円、海外2,680億円の計画です。営業利益は、当初と同じ500億円を目標としています。
投下資本効率(ROIC)については先ほどもお伝えしたとおり、納入遅延を発生させることのないよう在庫を増やしたため、数値的には苦しくなっています。総還元性向(5年平均)は、直近の5年では非常に高く、77.3パーセントとなっています。
ROEは8.0パーセント、配当性向は42.1パーセントです。5年前の配当性向は微々たるもので、20パーセントから30パーセントでした。自画自賛するわけではありませんが、直近の5年で大きく増えています。
売上高については、「生活の質の向上」貢献商品が2020年度売上高比で100パーセントアップとなっています。こちらは「乾太くん」や「ウルトラファインバブル」「マイクロファインバブル」などの商品が牽引しており、おそらく計画を達成できる見込みです。
地球環境貢献商品も、2020年度売上高比で70パーセントアップとしました。ハイブリッド給湯器の伸びが顕著になり、途中で目標を50パーセントアップから70パーセントアップに変更しましたが、こちらも達成見込みです。
CO2削減貢献量も700万トンから820万トンに設定し直しましたが、中国における販売減少の影響が大きく、当初目標よりも減少した結果、531万トンの見込みとなってしまいます。
中国は、当初の予想ではかなり伸び、伸びた分だけ高効率のボイラーや給湯器がCO2削減に貢献するだろうと考えていました。しかし、中国市場での販売がぐっと減るにつれてCO2削減量も減ってしまいました。最終的には、531万トンを目標に取り組んでいきます。
中期経営計画の進捗 (売上・利益)

中期経営計画の進捗状況です。売上については、為替影響もあり、1年前倒しで達成できました。最終年度はさらなる高みを目指します。新型コロナ禍の影響で需給バランスが乱れ、利益は不安定な推移となりましたが、最終年度は中期経営計画の目標を達成できると思っています。
当社事業に関わる、主な市場変化についてです。コロナ禍の影響による事業環境の変化では、先ほどもお話ししたとおり、サプライチェーンの分断による供給難に伴い在庫を増やしたことで、ROICが下がりました。つまり、在庫水準の引き上げがROICへの悪影響につながったということです。巣ごもり需要など、消費行動の変容も見られ、売れないのかと思えば寧ろ売れるなど、非常に読みづらい環境でした。
また、金利上昇に伴って住宅市場は停滞しました。一方でカーボンニュートラル志向の高まりにより、この5年でハイブリッド給湯器の「ECO ONE」が一気に注目されるなど、高付加価値商品が伸長しました。オーストラリアなど、一部の国では電化政策が推進され、ガス機器市場は縮小しています。全体的には原材料価格が上がってマイナスに作用したほか、急激な為替変動もありました。
25年度以降の事業環境の見通しと当社取組みの方向性

2025年度以降の事業環境の見直しと、当社取り組みの方向性についてです。日本では、人口・世帯の漸減やカーボンニュートラル、エネルギー価格の高騰、省エネ志向の強まりなどが見られるようになっています。
当社としては、生活水準向上ニーズの高まりにはガス衣類乾燥機「乾太くん」が一番効くと考えています。重点商品のさらなる拡販でも、実は「乾太くん」が伸び続けています。現在、沖縄での普及率は15パーセントです。さらに、沖縄で新しい家あるいは集合物件が建つ際、どの程度「乾太くん」が採用されているかを示した率は70パーセントから80パーセントとなります。
ところが、沖縄を除く北海道、九州、四国を含めた日本本土での普及率は、まだ1パーセントから2パーセントです。したがって、今後さらに普及する余地はあります。最近では集合物件の全戸に「乾太くん」を採用するハウスメーカーも増えてきているため、楽しみにしたいと思っています。
「モノづくり」のさらなる向上とグローバル展開のほか、技術の取込みによる電化商材への拡張も行います。米国の人口・世帯は漸増しており、カーボンニュートラルに向かいますが、エネルギー政策の濃淡は州によって異なります。日本支援により、現地生産をさらに拡大していきたいと思います。
中国市場の停滞は続く見込みです。現時点では厳しいですが、がんばって売上を長期的に伸ばしていきたいと思います。
中期経営計画の進捗 (社会課題解決への貢献)

エアバブル商材やガス衣類乾燥機は、日本だけでなく海外にも輸出しています。地球環境貢献商品にはコンデンシング給湯器やハイブリッド給湯器があり、主にオーストラリア向けとなりますが、ヒートポンプ給湯器などがあります。
CO2削減貢献量は、伸長を見込んでいた中国で思ったよりも台数が伸びず、目標を達成できない見込みです。
中期経営計画の進捗 (ROE・ROIC)

資本効率は、目標を下回る推移となっています。さらなる利益成長に加え、資本のコントロールによって資本効率向上を目指していきます。今期はROE8.0パーセント、ROICは12.0パーセントを目指したいと思っています。
中期経営計画の進捗 (総還元性向・配当性向)

5年前からの還元に関する推移です。配当性向は5年前の20パーセントから30パーセント、40パーセントと、一気に跳ね上がりました。さまざまなご不満はあるかと思いますが、我々もがんばっていきます。1株当たり配当金および配当性向は、増加を続けています。
25年度以降の資本政策の方向性

資本政策の方向性です。資本効率向上のため、早期の投資回収による利益の最大化を図っていきたいと思っています。次の中期経営計画では、2桁のROEを目指していきます。ROICについては、まずは当初目標の19パーセントを目指していきたいと思います。
25年度以降の資本政策の方向性

政策保有株式縮減を加速し、手元流動性を確保していきたい考えです。成長投資の実行や自己株式取得など、機動的な資金需要にも対応していきたいと思っています。
私からの説明は以上です。ありがとうございました。
質疑応答:国内値上げ効果について
質問者:日本で今年5月に行った製品の値上げ効果について、どのくらいを見ているのか教えてください。国内での増収にどの程度影響するのでしょうか?
内藤:ライバル会社も値上げしていますが、実際に値上げすることは意外に難しいと感じています。そのなかでも比較的、弊社はうまく実施できているのではないかと思っています。
5月に実施した値上げによる効果は、この半年程度で徐々に浸透していきます。ただし、そのまま利益に寄与するかというと、なかなか思ったとおりにはいかない部分もあります。
今までもそうですが、年々上がる材料費や仕入れ先の保護など、理由はさまざまです。いずれにせよ、期中から間違いなく業績に寄与してきます。16年間にわたって値上げしてこなかったところ、一昨年あるいは昨年あたりで3回の値上げを実施しましたが、世間と同様に拒否反応は少ないと感じています。
海外現地法人からの報告では、「今月の売上が減った理由は、昨年の値上げによる駆け込み需要である」といったお話もあちこちから聞こえていました。海外は非常に値上げしやすいのだろうとうらやましかったのですが、日本もそのようになってきたように感じています。
質疑応答:米国関税の影響について
質問者:米国市場における関税について質問です。米国のグリフィン工場で作っているノンコンデンシングタイプについて、日本から輸出している部品に関税がかかるだろうというお話がありました。その影響について教えてください。
今回の業績計画において、日本から米国へ輸出しているコンデンシングタイプに関税がかかるのかどうかはまだわからないため、織り込んでいないのでしょうか? 決算への織り込みと今後の見通しについて、現在はどのような状況にありますか? 日本からの製品の輸出における関税の影響についても教えてください。
内藤:現在、米国において、高効率でないノンコンデンシング給湯器については、日本から輸出した部品を現地で組み立てて生産しています。鉄とアルミを使う部品には関税がかかり、資材費がアップする見込みです。
これに対し、価格を3パーセントアップする改定を行いました。現在はどちらかといえば高効率のコンデンシングタイプが売れていますが、効率は若干低いものの、ノンコンデンシングタイプも意外と売れていく可能性があります。
高効率のコンデンシングタイプは日本で生産し、輸出しているため、関税がかかります。関税率が24パーセントなのか10パーセントなのか、このあたりは非常に流動的であり、場合分けがあまりにも大きすぎるため、考慮していません。唯一お話しできるのは、ライバル社もまったく同じ環境に置かれるため、当社だけが置き去りにはならないだろうと考えているということです。
質疑応答:上海林内の減収見通しと海外固定費の変動について

質問者:今期、上海林内では現地通貨ベースで4.2パーセントの減収を想定されていることについて質問です。こちらは、市場全体が弱含んでいることを反映した数字でしょうか? ローカルメーカーとの価格競争など、ロープライス化が進んでいる影響も一定程度見ていますか?
また、海外の固定費における、終わった期と現在の変動要素についても質問です。従前の計画では45億円の固定費の増加を見込まれていましたが、2025年3月期は計画よりも多い87億円となっていました。2026年3月期は5億円の固定費のマイナスを想定している背景について教えてください。
内藤:まず、中国市場についてお答えします。中国は非常に景気が悪く、全体の売上が減っています。現地メーカーは大幅に安売りしていますが、当社は価格をしっかりと守り、対応しています。とはいえ、現地メーカーであるミディアやハイアールの価格は当社の半額近くです。
あまり高値でがんばっていても、販売が大幅に落ちてはいけないため、塩梅を見ながら価格の見直しを行っています。これらを目標数値に落とし込んでいるとお考えください。
小川拓也氏(以下、小川):常務執行役員管理本部長の小川です。海外の固定費についてご説明します。2024年度の海外固定費は、利益に対してマイナス87億円となりました。当初の計画ではマイナス45億円で、計画との差異で一番大きい要員は為替です。
2024年度は為替の前提をかなり保守的に置いたため、固定費にはこれが逆向きに出ました。年度末には為替の影響でマイナス47億円に上っていますが、実質的にはマイナス40億円程度の影響となりました。当初の計画では為替影響を除いた実質ではマイナス57億円と見ていたため、低く収まっています。低く収まった理由は、上海林内です。上海林内の業績が途中で減速したことに合わせて、固定費も減らすように調整しました。

2025年度の計画では、プラス5億円で見ています。ただし、為替の影響をプラス37億円と見ているため、実質的にはマイナスになる、すなわち固定費は増える計画を立てています。
質疑応答:中期経営計画目標500億円の達成確度について
質問者:中期経営計画目標500億円の達成確度について質問です。現時点では、関税影響を織り込んでいないというお話でした。仮に関税が適用された場合も、値上げで転嫁するというコメントをいただいています。適用の影響があっても、国内の好調などもあるため、現在は500億円の目標を達成できる事業環境にあるという理解でよろしいですか?
内藤:500億円の利益達成は、十分可能だと考えています。米国には先行き不透明な部分も複数ありますが、現地で生産していることが効いてきそうです。
実は、米国のメーカーでも、販売しているタンク式給湯器をメキシコで生産しているところもあります。半分を米国で生産し、残りの半分を日本から送っている当社に比べると、他社はさらに苦しいかと思います。
つい最近、米国にあるDOEというエネルギー省の長官がジョージア州のグリフィンにあるリンナイの現地工場を訪れたことが、テレビで大々的に放送されました。
政治的な話になりますが、政権が民主党から共和党に変わっています。民主党の時は、この大事な工場で生産しても販売できなくなるような政策がとられました。ノンコンデンシング給湯器は販売禁止にしようとしていたのですが、そうなれば当社は困ります。ところが、共和党になってからはエネルギー省の長官も変わり、「米国でどんどん商品を作ってくれ」となったことから、販売禁止を止めることができました。これは、テレビでも全国ネットで放映されたかと思います。
日本のいわゆる閣議だと思いますが、トランプ大統領など大臣が並んでいるところで、長官であるライト氏が言ってくださいました。宣伝としては比較的効果があり、非常に良かったのではないかと思います。
このようなことも踏まえ、日本でも比重がかなり高まってきた付加価値の高い商品で利益を稼ぐことができそうだと思っているため、トータル500億円の利益達成は十分可能だと考えています。
質疑応答:米国における中期での成長ポテンシャルについて
質問者:米国における中期での成長ポテンシャルについて質問です。今期の営業利益率の計画は4.5パーセントですが、先ほど社長から「まだ物足りない」というニュアンスのコメントがありました。
来期以降は利益率を一段と改善させていくかと思いますが、米国の売上および利益率の中期的な上昇スピード感について教えてください。どのようなペースで10パーセントを目指していくのでしょうか? 来期には一気に上がっていくのか、それとも少し緩やかに上がっていくのでしょうか?
内藤:米国は大変変化が激しく、相変わらず貯湯式が市場の7割から8割、すなわち年間1,000万台のうち700万台から800万台売れています。このうち電熱式が50パーセント、ガスが50パーセントという比率です。
電熱商品は、3年から4年後には販売禁止になってしまいます。したがって、この販売禁止によって市場は非常に大きく変化しそうです。当然ながら利益は良い方向に持っていくつもりですが、いかにそこで戦うのかが問題です。このあたりを考えると、まだ利益の見当が立たないため、現時点で予想してほしいと言われても、なかなか難しいところです。
質疑応答:ヒートポンプ技術の方向性について
質問者:今後の方向性について質問です。先ほども少しお話があったかもしれませんが、今後は環境面も含め、電化商材・電気製品の取り扱いがキーになってくるかと思います。
そのような意味で、パロマ・リーム社は富士通ゼネラル社を買収しましたが、御社グループとしてはヒートポンプ技術をどのように開発・保有していくことになるのでしょうか? お考えや見通しがあれば教えてください。
内藤:ヒートポンプ技術はこれからの給湯器に必須のアイテムになってくるため、自社で技術を構築していかなければならないと考えており、現在、全力で努力しています。これ以上のことは、あまりお話しできません。
いずれにしても、ヒートポンプ式の給湯器は間違いなく増えています。ハイブリッド給湯器も同様ですが、ヒートポンプだけの商品も増えていくだろうと思っています。それに対応できるよう、我々も用意していかなければいけないと考えています。
質疑応答:米国向けコンデンシング給湯器における関税賦課の有無、米国工場への生産移管について
質問者:現在、日本から米国に輸出しているコンデンシング給湯器に10パーセントの相互関税はかかっているのでしょうか? 将来的に、コンデンシング給湯器をグリフィン工場に移管できますか?
内藤:10パーセントの相互関税の影響はまだ限定的ですが、これから影響が出てくるだろうと思っています。また、税率が10パーセントに収まるのか、25パーセントになってしまうのかという予想は、なかなか難しいです。
いずれにしても影響はあるでしょうが、少なくともコンデンシング給湯器についてはライバルと同じ土俵です。ライバルとほぼ同じ条件のため、このあたりをどのように考えるかは非常に難しく、結果を見て「こうなった」と発表することになりそうです。
生産移管について、将来的には、いただいたご質問のようにしていく必要があると思っています。ノンコンデンシング給湯器を生産しているのは、まずは簡単な製品で地ならししてから高度な製品へ、という考え方もあるためです。将来的には、コンデンシング給湯器も現地で生産できるようにしていきたいと考えています。
質問者:関税がかかってきた部分については、値上げで対応する方針ですか?
内藤:いずれにしても値上げするだろうと思っていますが、値上げ幅は、まだ決めていません。状況を見ながら決めていくということになりそうです。
質疑応答:「ECO ONE」「乾太くん」の販売台数について
質問者:日本事業の注力商品ハイブリッド給湯器「ECO ONE」、ガス衣類乾燥機「乾太くん」において、2026年3月期の販売台数の伸び率に差が見られる背景について質問です。「ECO ONE」には補助金効果があるため、まだ伸びしろもあるのでしょうか? 「乾太くん」が10パーセント成長となっているのは、新築住宅の伸びなどがあまり強くない点を見て設定されていますか?
内藤:「乾太くん」とハイブリッド給湯器ではもともとの母数が異なります。「ECO ONE」の場合、国から1台当たり15万円の補助金が出ている点が非常に大きく、前年比が大幅に跳ね上がりました。この補助金はなくならず、別のかたちに変わって継続すると思われます。補助金がなくても伸びを期待できますが、さらに伸びるには良い環境下だと思っています。
質疑応答:今後の負債活用について

質問者:バランスシートについて質問です。2025年度以降の資本政策の方向性を説明するスライド内に、「負債活用」という記載があります。3月には、R&Iで「A+」の格付けを取得されているかと思います。現在のフリーキャッシュフロー、すなわち純利益のアロケーション配分も、非常にすばらしい状況です。
以前から来年以降は成長投資を増やす予定だとうかがっている中、ここから負債を活用していけば、株主還元の水準を減らさず投資もでき、レバレッジによるROEの向上にも寄与しそうです。次期中期経営計画以降での負債活用について、どのように考えられているのか教えてください。
内藤:そのあたりは、これから柔軟に行っていくべきだと考えています。
小川:社長がお話しした柔軟な取り組みについて、私からご説明します。将来に向けての成長投資ももちろんですが、M&Aなど、さまざまな要素がどのようなかたちでどの程度あり、どの程度の資金が必要かはまだわかりません。
格付けの取得には、資金調達の手段を幅広に増やすという側面もありました。現段階で本年から来年に必ず負債を活用すると断言はできませんが、柔軟に考えていきたいという意味合いがあります。
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