ispace、宇宙戦略基金テーマ「月極域における高精度着陸技術」にispaceが採択 Mission 6の開発を正式に開始

投稿:2026/02/16 17:00

CEOメッセージ

袴田武史氏(以下、袴田):みなさま、こんにちは。代表取締役CEOの袴田です。本日はお忙しい中、当社の決算発表をご覧いただき、誠にありがとうございます。

本日は少し特別な場所からお届けしています。現在、ispaceはこれまで2ヶ所に分かれていたオフィスとランダー(月着陸船)の管制室であるミッションコントロールセンターを1つの拠点に集約するための統合移転作業を進めています。まだ工事の最中ですが、Mission 1、Mission 2を遂行した当社ゆかりの日本橋における新しい拠点で、引き続き次のミッションに向けた技術の向上と成熟を進め、事業の成長・加速を図っていきます。

もう1つの新しいグローバル拠点として、ispaceはサウジアラビア王国に子会社を設立することを、サウジアラビアのリヤドで開催された「日・サウジ・ビジョン2030閣僚ラウンドテーブル」で発表しました。

この会は、日本の赤澤経済産業大臣とサウジのファーレフ投資大臣が主導して開催したもので、日本産業界代表団の一員として新拠点の設立を発表できたことを大変うれしく思います。

日本、ルクセンブルク、アメリカに続く4つ目のグローバル拠点として、宇宙への投資を拡大しているサウジアラビアにおいて、事業基盤を強固にし、政府や研究機関、商業パートナーとの連携を一層強化していきます。

国内に目を向けると、年頭の記者会見において日本政府から心強いメッセージが示されました。宇宙分野を経済成長の柱と位置付け、1兆円規模の宇宙戦略基金による継続的な支援に加え、法改正によるルール整備で宇宙事業を後押しする方針が発表されました。このように、国を挙げて宇宙ビジネスを確立しようという意志は、私たちの背中を力強く押しています。

そのような政府の支援策の中で、ispaceは、宇宙戦略基金から支援上限200億円の「月極域における高精度着陸技術」というテーマに採択されることが決まりました。

月極域には、将来の月面活動の鍵となる水資源の存在が期待されています。水資源にアクセスするためには、ピンポイントで着陸する高度な技術が極めて重要な課題です。ispaceは、技術力を結集し、この困難な課題に果敢に挑戦することで、確かな成果を提供できるよう、開発に邁進していきます。

この後は、直近の営業進捗や各ミッションの開発進捗など、第3四半期のアップデートを取締役CFO兼事業統括エグゼクティブの野﨑よりご説明します。

CONTENTS

野﨑順平氏(以下、野﨑):みなさま、こんにちは。取締役CFO兼事業統括エグゼクティブの野﨑です。本日は当社第3四半期の決算説明会をご視聴いただきまして、誠にありがとうございます。

本日は重要な事業進捗がありましたので、まずそのご報告をします。続いて、本日発表しました通期業績予想の修正についてアップデートします。それでは、順にご説明します。

月面ビジネスの需要加速(マクロ環境)

まず初めに、マクロ環境について触れたいと思います。月面ビジネスを取り巻く環境は、特に日米両国の政府方針が当社のビジネスに大きな追い風となっています。

米国ではトランプ政権誕生から約1年が経過し、NASAの新長官にジャレッド・アイザックマン氏が就任しました。起業家から民間宇宙飛行士となった経歴を持つアイザックマン氏は、アルテミス計画の迅速化と民間企業主導による宇宙ビジネスの加速を目指す構想を示しました。

また、これまでトランプ政権下の宇宙政策には一定の不透明さがありましたが、昨年12月にトランプ大統領が非常に重要な大統領令を発表しました。2028年までの月面有人着陸や2030年までの月面用原子炉の実現が明記されるなど、月を宇宙政策の中心として推し進める力強い方向性が示されています。

日本では、小野田内閣府特命担当大臣を座長とする日本成長戦略会議の航空・宇宙ワーキンググループに当社CEOの袴田が参加し、民間主導の宇宙開発を加速させるための提言を行いました。宇宙が安全保障と経済成長を支える次世代の基幹産業とされる中、民間の立場から日本の宇宙開発の一助となるべく、今後も積極的に貢献していきます。

ミッション3の概要

それでは、当社のミッション進捗についてお話しします。Mission 3およびMission 4は、当四半期においてミッション内容や契約総額などに特段のアップデートはありません。

ミッション4の概要

開発進捗については、エンジン開発に関するアップデートがありますので、後ほどご説明します。

ミッション6の進捗

今回の最大のアップデートはMission 6です。2026年1月、宇宙戦略基金事業(第二期)のテーマの1つである「月極域における高精度着陸技術」にispaceが採択されました。支援上限額は200億円という非常に大規模なもので、この採択を受けて当社はMission 6の開発を正式に開始しました。

今後の流れとしては、1回目の契約締結後にステージゲート審査を経て段階的に契約が締結され、それに応じて補助金も段階的に受領する予定です。

このMission 6のポイントは、2024年にJAXAの小型月着陸実証機(SLIM)により実証された月面へのピンポイント着陸技術を当社ランダーで活用する点です。

ピンポイント着陸技術は、日本が世界に対して高い優位性を示す技術です。目的地から半径100メートル以内という極めて高い精度で月面着陸を行い、これを民間企業による商業ランダーとして実証することを目指しています。

また、この採択に加えて、後ほどご報告するESA(欧州宇宙機関)からの予算確保により、Mission 6のコストはほぼカバーされる見込みであり、従来比で極めて収益性が向上するミッションになると見込んでいます。

ミッション6の進捗

今お話しした欧州における大幅な進捗は、スライドの内容となります。これまでispaceの欧州拠点を中心に、ESAの「MAGPIE」プロジェクトの研究開発段階であるフェーズ1を進めてきましたが、直近でその成果が評価され、フェーズ2において最大119億円という非常に大型の予算がESAにより確保されたことが発表されました。

正式なESAとの契約締結は今後となりますが、ispaceが欧州拠点を設立してから8年が経過し、着実にESAとの間で関係を構築してきた成果が現れつつあります。今後も研究開発を進め、欧州初のローバー(月面探査車)による月面探査の実現を目指します。

ミッション6の概要

宇宙戦略基金事業(第二期)および欧州宇宙機関による「MAGPIE」案件、この2つの大型案件を基盤として、Mission 6の開発を着実に進めていきます。なお、Mission 6の打ち上げは2029年を予定しています。

将来ミッションの進捗

将来ミッションの進捗について、いくつかアップデートをお知らせします。このたび当社は、中東のサウジアラビア王国に、日本、ルクセンブルク、アメリカに続く4つ目のグローバル拠点を設立することを決定しました。

本年1月11日、サウジアラビアのリヤドで開催された「日・サウジ・ビジョン2030閣僚ラウンドテーブル」の中のインベストメント・フォーラムに合わせて、新拠点の設立を発表しました。今後、大きな成長が期待される市場において、サウジアラビア発のペイロード(荷物)開発を支援するとともに、同国における月ミッションの検討を本格化させていきます。

将来ミッションの進捗

国内では、JAXAと推進系の最適化および月周回におけるスペースデブリ(宇宙ごみ)低減に関する契約を相次いで締結しました。

コアビジネスである輸送サービスやデータサービスにとどまらず、技術開発や環境整備といった全方位でJAXAとの連携を強化し、共同で将来のシスルナ経済圏のインフラ構築に寄与することを目指します。

将来ミッションの進捗

2025年12月に終了した「HAKUTO-Rプログラム」のパートナー企業とは、協賛から戦略的協業へと形を変え、関係を継続しています。栗田工業社とは月面の水資源開発に関する協業を、JALグループとは月面輸送・運航分野および個人向けのペイロード搭載など、新たなサービスの協業を進めていきます。

将来ミッションの進捗

さらに、ダイモン社とペイロード輸送ボックスの開発を共同で実施することを検討しています。月面へのペイロード輸送のハードルを下げ、月面ビジネスへ参入しやすい環境の構築を目指します。

また、産学連携にも進捗があり、宇宙戦略基金事業(第二期)に採択された立命館大学と協力し、将来の月面基地建設に向けた研究を共同で実施しています。

当社KPI(営業面)

今後も国内外での関係構築や協業を進め、将来のペイロード顧客獲得に向けて積極的な営業活動を続けていきます。営業KPIに関しては、スライドの表の赤字で示しているとおり、Mission 6の2案件がそれぞれ「採択済」「予算確保済」となっており、これらの蓋然性および進捗を明確に示すことができました。

また、「MAGPIE」は、当初の見込みであった70億円から今回119億円に増額されました。このように、獲得可能性が一定程度認められる案件までを含めたプロジェクト収益の合計として、ispaceはすでに583億円の売上パイプラインを確保しています。

みなさまにご理解いただきたい点として、売上計上のタイミングがあります。打上げ自体が数年先であっても、契約締結時から進捗に応じた売上の計上が始まります。

現在、多くの大型案件が計上開始時期を迎えており、今後、合計583億円に上る収益を重層的に積み上げていく見込みです。さらに972億円の潜在的需要も確認されており、これらを着実に契約へとつなげていきます。

開発KPIの進捗に関しては、Mission 3で今後のCDR(Critical Design Review:詳細設計審査会)完了を目指した検討を進めています。また、Mission 4では構造試験モデルの製作に取り掛かり、今後のPDR(Preliminary Design Review:基本設計審査会)完了に向けて進捗しています。引き続き、開発の進捗については適宜お知らせします。

ミッション計画

ここまでのアップデートを含めた、最新のミッション計画についてご説明します。現在、Mission 2までの研究開発フェーズから商業化初期フェーズへと移行しました。今回、Mission 6の開発開始を決定したことで、その後の量産化フェーズへの道筋が一層明確になりました。量産による開発費の低減と売上成長を両立させ、各ミッション単体での黒字化を目指していきます。

業績見通し修正

続いて、当社はこのたび、2025年5月に発表していた2026年3月期の業績見通しを修正することとなりましたので、その詳細をご説明します。

当社は、会計上の売上高と営業外収益に含まれる補助金収入を合わせた「プロジェクト収益」を会社の本質的な力を示す数値として提示していますが、2026年3月期のプロジェクト収益の見込みを、当初予測の約100億円から約4割減の60億円に修正しました。

4割という数値は非常に大きなマイナスに見えますが、ご注意いただきたい点として、減収の大部分を占める、グラフの点線で囲まれた部分は、すでに締結済みの契約からの収益が翌期以降へ繰り越されるものであり、一般的な売上減に見られるような契約の喪失や需要の減退による収益減ではありません。つまり、会社の稼ぐ力である総契約金額に変わりはありませんので、ご安心ください。

業績見通し修正

プロジェクト収益の減収要因をさらに詳しく分析したものがこちらです。今回計画していたMission 5の新規契約がまだ締結されていないこと、またMission 2の着陸失敗による一部売上の減少など、実質的な収益減はグラフのグレーで表されたごく一部にとどまっています。

減収要因の大部分はあくまで翌期以降への繰り越しであり、一般的に「減収」と聞いて想起される契約そのものの失注や、マーケットの弱含みといった要因によるものではない点を重ねて強調します。

では、なぜこの繰り越しが発生したのかについてですが、Mission 3およびMission 4で共通して使用する予定の新エンジンの開発に、当初計画よりも時間を要していることが背景に挙げられます。これにより、Mission 3では開発マイルストーンにひも付くドレイパー社からの入金が遅延し、今期のプロジェクト収益が減少する見込みです。

また、Mission 4では新エンジンの遅延に伴う支出の後ろ倒しに加え、複数の開発部品の支出を能動的に遅らせることで、費用発生の最適化を図りました。基本的に、SBIR制度(Small Business Innovation Research 制度:中小企業技術革新制度)による補助金は、四半期ごとに使用したコスト分だけ受け取る仕組みとなっているため、コストを減らすと補助金収入も減少することになります。

新エンジン開発の状況

スライドにお示しした新エンジンは、2025年5月に発表したAgile社と当社の共同開発による「VoidRunner」と呼ばれるものです。

昨年よりAgile社による性能試験が順次進んでいますが、現在の状況として、ミッションに必要な性能、具体的にはエンジンの燃費ともいえる比推力について、要求水準の実現に想定以上の時間を要しています。

引き続き改善と試験を継続し、性能の実現を目指していますが、実現が困難となる場合のバックアップ策として、代替エンジンへの切り替えも視野に入れて検討を進めています。

代替エンジンへ切り替える場合や、現行の「VoidRunner」の開発を継続し性能実現にさらなる時間を要する場合には、将来的にMission 3の打ち上げスケジュールに遅延が生じる可能性があります。新エンジンの開発状況については、今後も適宜報告していきます。

当社の売上計上の方法

先ほどMission 3に関して、入金遅れによる売上減少についてご説明しましたが、ご参考までに、スライドは原価回収基準における前受金、売上、原価の関係を示したものです。

当社のMission 3およびMission 4に適用されている原価回収基準では、開発マイルストーンを達成することにより、顧客から受領した前受金および将来的に受領予定の入金額、これらを合わせて「前受金等」と呼びますが、こちらを上限として、原価に相当する売上高が計上される仕組みとなっています。

そのため、前受金等が十分である場合、ミッション期間中は粗利がゼロとなり、ミッション完了時に黒字となります。

一方、第3四半期決算では、スライドの真ん中の②に記載のとおり、顧客からの入金遅れにより前受金等が不足しているため、原価は発生しているものの売上を計上できない状況が生じ、その結果、粗利が一時的に赤字となっています。今後、顧客からの入金により前受金等が回復すれば、売上の計上が再開される予定です。

業績見通し修正

こちらのスライドでは、最終利益の変動要因について説明します。売上高と同様に、開発状況の影響により売上計上および補助金収入が遅れ、最終利益の減少につながる一方で、同様の背景から販売管理費の費用計上も後ろ倒しとなったため、結果的に当期純損失は改善する見通しとなっています。

業績予想の修正

以上の結果、修正後の今期業績見通しはスライドのとおりです。今年度のプロジェクト収益の見込みについて、当初予測の100億円から約4割減となる60億円に修正しましたが、減収分の大部分は翌期以降へ繰り越される予定です。

あらためて、会社の稼ぐ力である総契約金額に変わりはないことをお伝えします。以上が業績見通し修正のご説明です。

損益計算書

最後に、第3四半期における財務諸表についてご説明します。まずは損益計算書です。売上高はMission 3での開発進捗に伴い27億円となり、前年同期比で増収となりました。一方、営業損益は先ほどご説明した売上計上の遅延などの影響により69億円の赤字となり、前年同期比でやや損失が拡大しています。

当期純利益は62億円の赤字で、対前年比で縮小しています。なお、Mission 4に関するSBIR補助金収入は、今年度受領した金額を第4四半期に一括で営業外収益として計上する予定です。

損益計算書 - 販売管理費の内訳

販売管理費の内訳です。販売管理費は前年同期比で7.7パーセント減少しています。これは、日本法人の開発がMission 2からMission 4へ移行したことに伴い、費用計上の中心が研究開発費から原価へと計上区分がシフトしたことが主な要因です。

貸借対照表

バランスシートについてです。主に第3四半期に実施した合計182億円の公募増資および第三者割当増資の影響により、資産サイドでは現預金が342億円となり、安定的な手元流動性を確保しています。また、純資産は168億円に増加し、安定的な財務基盤を構築しています。以上が財務の説明です。

IR活動の状況

最後に、IR活動に関するお知らせです。当社は最新情報をより多くの株主や投資家のみなさまにお届けするため、さまざまな媒体を活用した情報発信に取り組んでいます。

こちらに記載したのはその一例です。3月以降も個人投資家のみなさまを対象とした説明会が予定されており、CEOの袴田、CFOの野﨑、そしてIRマネージャーの今井がそれぞれ登壇する予定です。みなさまと充実したコミュニケーションを図っていきますので、ぜひご参加ください。

以上で、第3四半期の決算説明を終わります。この後、ファイヤーサイドチャットおよびQ&Aセッションに移ります。こちらもどうぞご覧ください。ご視聴ありがとうございました。

Fire side chat及びQ&Aセッション

今井健太郎氏(以下、今井): IRマネージャーの今井と申します。みなさま、本日は決算説明会をご視聴いただきありがとうございます。

それでは、みなさまからのご質問を受け付けながら、四半期アップデートの内容について少し深掘りするような議論を進めていきたいと思います。今回も前回に引き続き、代表取締役CEOの袴田と取締役CFO兼事業統括エグゼクティブの野﨑の2名がスピーカーを務めます。

まず、Mission 6に関して大きなうれしいニュースがありました。上限200億円の宇宙戦略基金の採択について、袴田さんからコメントをいただけますか。

袴田:宇宙戦略基金事業(第二期)で、「月極域における高精度着陸技術」というテーマで見事に採択されました。このテーマは当社のためにあるようなものでもあったため、しっかりと提案を準備し、獲得に向けて進めてきました。採択結果が出て、まずはひと安心しています。

野﨑:昨年からIRミーティングやさまざまなカンファレンスで、当社はこれを獲得すると繰り返し発信してきたので、安心しましたね。

袴田:そうですね。当社のチームが気持ちを込めてしっかりと提案書を作り上げたので、当然の結果かと思っています。

今回のテーマである南極域への高精度着陸は、実現する上でJAXAが以前のミッションで開発したSLIMという着陸船の高精度着陸技術を活用し、南極への着陸のためのさらなる技術開発を行う必要があります。

この技術開発により、世界でも優位性のある月面着陸技術を獲得することを目指しています。

野﨑:難しい言葉を少し解説したほうがよいかと思いますが、テーマにある「極域」について具体的なご説明をお願いします。

袴田:今回のミッションでは南極が対象になります。南極、簡単に言うと月の下のほうに着陸を目指していくのですが、SLIMは高精度着陸を実現する技術として、画像航法を採用しています。この技術は月面の映像を認識し、目標地点に正確に着陸するためのものです。

その際、影の情報をしっかりと認識することが非常に重要です。SLIMは中緯度、つまり月の赤道から少し下のあたりに着陸しており、そのエリアでは影がはっきりしておりわかりやすいのです。

一方で、南極に行くと太陽光が横から入るため、影が非常に長く伸びる現象が起こります。そうすると、画像認識が非常に難しくなるため、画像認識を行いながらも「LiDAR(ライダー)」などの新しいセンサも活用して、高精度な着陸を実現していきます。

野﨑:影の長さを測りながら、高精度に、着実に認識していくということですね。

袴田:1つの判断材料として影があり、さらにクレーターの形状やさまざまな特徴点を確認していきます。

野﨑:Mission 1やMission 2は極域ではなく、中緯度の少し上の領域でしたが、今回のMission 3では極域を目指し、その先のMission 6でも極域へ行く予定ということですね。

袴田:はい。極域は水が存在すると考えられており、非常に重要なターゲットとなっています。

今井:Mission 6は、欧州宇宙機関(ESA)から当社向けの予算確保がありますが、これも踏まえて野﨑さんからコメントをいただければと思います。

野﨑:まず、予算を確保できたことは良かったと思います。ただし、やはり重要なのは「お客さまをどうするのか」という点です。今回、Mission 6を実行できるのは非常にすばらしいことだと考えています。

Mission 3とMission 4は、現在アメリカと日本で進めています。Mission 4ではランダーのモデルをさまざまな機会でお見せして、順調に進捗していることを示しています。それに加えて、Mission 6も開始されることで、ispaceは世界で3つのランダーを並行して製作することになります。

開発自体も大変ではありますが、さらにビジネスとしてどう成立させるのか、つまりお客さまをどう獲得していくのかという課題があります。

その課題において、Mission 6はすでに一番大きなお客さまが決まっています。欧州宇宙機関(ESA)は、日本でいうJAXA、アメリカでいうNASAに相当する機関であり、119億円という大きな予算が確保されています。

現時点でこの予算すべてが契約済みというわけではありませんが、「MAGPIE」というミッションは、以前から当社がESAと継続的に協議をしながら進めているもので、ESAのために当社がローバーを開発し、さらにESAの荷物を当社のランダーに搭載し、運ぶという、非常に大規模なミッションとなっています。

この契約の確実性が高まってきたということで、宇宙戦略基金で200億円の補助金を確保し、ESAから119億円の予算を確保し、収益性という意味では以前と比べても優れたミッションかと思います。

今井:現在、宇宙戦略基金については採択済、欧州宇宙機関については予算確保というステータスです。今後、契約締結などの進捗があった際には、適時IRを通じて開示していきます。

さて、Mission 6に関して喜ばしいニュースがあった一方で、直近のMission 3を主因とした業績予想の修正が発生しています。野﨑さんから詳細についてのご説明をお願いします。

野﨑:今回、プロジェクト収益の下方修正を発表しました。2025年5月に示した2026年3月期のプロジェクト収益の見通しとして、チャートで約100億円になるとお伝えしていました。しかし、今回の第3四半期で60億円に修正することを発表しました。

ただし、今回最もお伝えしたいのは、この修正について驚かれるかもしれませんが、これは会社にとって悪いことが起きたり、ispaceの力が弱くなったりといったことでは決してない、という点です。

一般的に売上のマイナスといえば、例えば顧客からの失注や、需要や市場がそもそも悪化して減少したといったことが挙げられます。もしこれらの理由で、今回のように4割程度も減少してしまったとしたら、それは大きな問題となります。

しかし、当社の場合はそのようなケースではありません。このオレンジ色の点線で囲まれた部分が示しているのは、すでに契約済みの金額です。具体的な例を挙げると、Mission 3におけるNASAとの契約です。これらの大きな金額の契約を当社はすでに締結しています。

例えば、Mission 4ではSBIR補助金として120億円を経済産業省から受領する予定です。このように、契約については確実なものとなっている中で、いつ売上を計上するかという点が論点となっています。本来は今期に計上する予定でしたが、計上が来期以降へ繰り延べとなりました。これが今回起きている事象です。

そのため、ispaceの稼ぐ力自体に変わりはなく、当社が締結している契約額にも一切変更はありません。計上のタイミングが来期にずれただけです。この点をしっかりとご説明したいと考え、今回の発表を行った次第です。

質疑応答:「VoidRunner」に関連するミッション遅延と資金施策への影響について

今井:「『VoidRunner』に関して、開発遅延がミッションスケジュール遅延につながる場合、資金繰りや資本政策の観点で留意するべき点があればお教えください」というご質問です。

野﨑:本開発遅延がミッション遅延につながるかどうかは、まだわかりません。今回は、新エンジンの開発の遅れが業績修正に影響することが明確となりましたので、その点を初めてお伝えするかたちとなりました。現在、新エンジンの開発試験は続いており、要求するパフォーマンスが出る可能性もあると考えています。

ただし、もしこのまま要求するパフォーマンスが出ない場合や、新しいエンジンに切り替える必要がある場合、スケジュール遅延のリスクがあるということをお伝えしました。ファイナンス的なコストという観点では、去年の秋に実施した182億円の公募増資の資金に加え、Mission 3の既存のNASA契約やそれ以外のお客さまとの契約、Mission 4のSBIR補助金は変わらず確保されています。

さらに追加で必要となる資金としては、例えば、エンジンを変更する場合の追加費用や、ミッションが後ろ倒しになった場合に発生する月々の人件費やオフィス費用などが挙げられます。

その追加費用は、100億円を超えるような大規模なものにはならないと考えています。現時点では試算の結果は出ていませんが、仮に追加の資金が必要になった場合でも、さまざまな方法によって自社内で管理できる程度の規模に収まるだろうというのが、現時点での感覚です。

袴田:「VoidRunner」の開発状況ですが、昨年「VoidRunner」をAgile社とispaceで共同開発する取り組みを進めており、今回課題となっているのは、エンジンのスラスター(推進装置)が目標としている比推力にまだ達していない点です。

Agile社の強みは3Dプリンティング技術の活用にあり、問題が生じた際に迅速に再設計を行い、製造して試験を繰り返すことが可能です。そのため、当社としては目標を達成できると考えており、現在モニタリングを進めています。

また、単に状況を観察するだけでなく、現地にエンジニアを派遣してAgile社ののエンジニアと議論を重ねています。モニタリングを進める一方で、バックアップ策は会社として考えていかなければならないため、経営陣による検討を進めています。

質疑応答:Mission 5未採択の件とナンバリングの関連について

今井:Mission 5は今回未採択ということで、売上減少の要因の1つではあるのですが、それに関連して、「Mission 5は未採択であるにもかかわらず、今回発表のMission 6とナンバリングが変わっていない理由を教えてください」というご質問です。

野﨑:下方修正の大部分は、ウォーターフォール図の薄いオレンジ色の部分3つがほとんどを占めていますが、これは第4四半期以降にずれる部分です。

一方、一番左のグレーの部分はいわゆる一般的な売上減によるものです。このグレー部分の一部は、Mission 2が2025年6月に月面に着陸できなかったことにより、Mission 2で本来計上されるはずだった売上の一部が計上できなかったことが要因です。

もう1つは、現在進行中のMission 5で、当社が「取ります」として昨年5月に宣言しましたが、現時点で成果を得られていないことによるものです。これは、当社の弱い部分であり、正直にグレーの部分で示しています。ご質問の趣旨はそこにあるかと思います。

マイルストーンに話を戻すと、NASAの「CLPS(Commercial Lunar Payload Service)」をMission 5で取りたかったものの、果たせていません。その背景にはさまざまな理由がありますが、1つには当社がまだ契約を取り付けられていないこと、もう1つには、昨年、米政府によるNASAの長期的な閉鎖があったことが挙げられます。これらの事象がNASAの計画の進捗や、当社が獲得を目指している契約に遅れが生じている原因となっています。

いずれにしても、ナンバリングは現時点で変更はしていません。今後状況によって変更が生じる可能性はあるものの、例えばアメリカで次の案件を獲得し、2029年に打上げを行うような開発が進む可能性もあると考えています。

例えば今後、NASAからの受注があり、お客さまが2030年や2031年に飛行を希望する場合、その時点で変更の可能性があるかもしれません。しかし現時点では、まだ変更に必要な情報がそろっていないというのが背景かと思います。

質疑応答:NASAの「CLPS 2.0」とMission 5の受注時期の関連について

今井:「NASAは『CLPS 2.0』の開始に向けて動き出していると思いますが、この動きとMission 5の受注時期がどのように関連してくるのかについてもお教えください」というご質問です。

袴田:「CLPS」に関しては、引き続きタスクオーダーが出される予定で、当社は応札を行う予定です。ただし、ミッションのスケジュールはまだ確定していないため、それを踏まえた上で今後調整を進めていくことになると考えています。

質疑応答:「CLPS 2.0」へ移行することによる影響とアイザックマン氏について

今井:「『CLPS 2.0』へ移行することで御社への要求ハードルや競争環境がどのように変化する可能性があるかも教えてください」というご質問です。

袴田:アメリカ、NASAの状況に関しては、現在当社が参加している「CLPS」の次となる「CLPS 2.0」の検討が、NASA内部ですでに進められていると認識しています。

NASAとしてもプログラムの設計にあたり、産業界からの情報収集を重ねながら進めていくものと理解しています。そのため、もう少し時間がかかるかもしれませんが、現在アイザックマン氏が長官となり、大統領令も出されており、アメリカの「月」に向かうスピードが加速していくと考えています。当社としては「CLPS 2.0」に非常に大きな期待を寄せていますし、それ以外にも新たな展開が出てくるのではないかと思います。

野﨑:アイザックマン氏の話でいえば、ようやく長官が決まりました。スライドの前半でも少し触れましたが、当社も約1年待った印象です。

袴田:ノミネートされてから1度キャンセルされるということがあり、一時的に状況が不安定になりましたが、結果的にアイザックマン氏が無事に長官に就任しました。

野﨑:アイザックマン氏にお会いしたことはありますか?

袴田:個人的にはまだお会いしたことはありませんが、現在、アイザックマン氏はアメリカの産業界とも多くのコミュニケーションを取っているようだということを報道などを通じて認識しています。非常に期待できる状況ではないかと思っています。

野﨑:噂のレベルではありますが、彼はNASAに対して民間企業的な変革を求めているようですね。

袴田:アイザックマン氏の過去の「X」における投稿や、個人的に作成している計画書なども情報として公開されています。こうした情報を見る限り、民間の活力をいかに活用していくかを大きなテーマとして掲げているように思います。当社のようなスタートアップを活用していくことが、彼のミッションの1つだと考えています。

質疑応答:サウジアラビア現地法人設立の目的と時間軸について

今井:「サウジアラビアに現地法人を設立するとのことですが、これは将来的にサウジアラビア政府機関をアンカーテナント(サービス発注者)としたミッションの実施を視野に入れていると理解してよいでしょうか? また、その場合、どのような時間軸での実施を見込んでいるのか教えていただけますか?」というご質問です。

野﨑:当社は、日本、アメリカ、ルクセンブルクに続いて、サウジアラビアに第4の法人の設立を発表しました。ご質問に端的にお答えすれば、ご認識のとおりです。サウジアラビアにはサウジ宇宙庁(SSA)という機関があり、私たちも頻繁にコミュニケーションを取っています。

同国はオイルマネーによる強大な国力を有しており、ポテンシャルも非常に高いです。宇宙市場の規模が3.6倍に拡大すると言われており、サウジアラビアは宇宙分野に関して非常に意欲的です。

また、サウジアラビアには、2030年に向けた国としての指針(Saudi Vision 2030)があります。2026年1月に、赤澤経済産業大臣を中心とする日本の訪問団がリヤドを訪れました。ispaceも同行し、私も参加しましたが、大変注目されていました。現在、日本とサウジアラビアの間では協力を進めようという動きがあり、両国の関係は非常に強固です。

その中で、サウジアラビアの重要なテーマの1つとして、宇宙分野にしっかり取り組もうという目標があります。現在、その宇宙戦略が策定されるのを待っています。また、赤澤大臣のスピーチでは、「ぜひ、月面開発も一緒にやりましょう」という言葉をサウジアラビアに向けて伝えるなど、ラブコールが送られている状況です。

当社としても、具体的な時間軸はまだ明言できませんが、これまでの対話を通じて機運が高まっている中、良いタイミングだと判断して法人を設立することを決定しました。

さらに、テクニカルな理由として、サウジアラビアではサウジ宇宙庁とさまざまなビジネスを進める際、現地法人が必要という事情があります。そうした背景もあり、今回、当社としてしっかりとコミットし、取り組みを進めていくという方針を発表しました。

袴田:また、サウジ宇宙庁だけでなく、現地のさまざまなパートナーとも多方面で検討を進めています。

野﨑:そのとおりです。中東特有だと思いますが、キャパシティビルディング、つまり国の産業をしっかり構築してほしいという要望が非常に強いです。そのため、私たちとしても何ができるかを現在さまざまな角度から水面下で議論しています。

当社のエンジニアも現地に頻繁に赴き、政府機関、研究機関、民間企業及び現地のエンジニアと協力してプロジェクトを進め、一緒に事業を作り上げていく取り組みが盛り上がっています。非常に楽しみなエリアだと感じています。

質疑応答:OTVの開発状況と今後の優先順位について

今井:「第2四半期決算時にOTV(Orbital Transfer Vehicle:軌道間輸送機)の開発検討開始を発表されていますが、宇宙戦略基金には採択されませんでした。その後のOTVに関する検討は、現在どのようなフェーズにあるのかを教えてください。

併せて、OTVは大きな開発資金を必要とする一方で、海外企業の参入動向やTelespazio社との関係、手法面の制約などの考慮も必要になるかと思いますが、どのような優先順位で取り組むお考えなのか、お聞かせください」というご質問です。

袴田:財務に関しては最後に補足をいただければと思いますが、全体としては、前回の決算でもお伝えしたとおり、今後月軌道周回のニーズが増加すると考えています。この見解は変わりません。そのため、月周回衛星を適切に輸送するためのOTVは今後も必要なツールであると認識しています。

残念ながら宇宙戦略基金の採択はされませんでしたが、当社にはTelespazio社のような具体的な顧客候補を認識しているため、引き続き開発の検討を重ねていきたいと考えています。

野﨑:宇宙戦略基金が採択されなかった点については、コメントしにくい部分がありますが、採択されなかったからといって、OTVの重要性が下がるわけではありません。会社としては、財務体力を考慮しつつどのタイミングで進めるかを慎重に判断すべきと考えています。

また、重要なポイントとしてお伝えしたいのは、Telespazio社とのLOI(Letter of Intent:意向表明書)は顕在化している大きな需要です。まだ発表ができるほど具体的にはなっていませんが、他にも月周回への輸送を望む需要を把握しています。こうした需要を確実に取り込み、開発費を賄うだけの売上を確保することが重要だと考えています。

当社は2029年から2030年のマーケットインを目指しており、幸いまだ時間に余裕があります。その間に需要を固めることに注力すべきではないかと考えています。

また、OTVの開発に関しては、まったく新しいものを作るというよりも、Mission 1および2で実証した技術を多く活用するかたちになります。そのため、開発費についてもゼロから開発するかたちでなく、ispaceで蓄積してきた技術を活かし、例えばMission 1および2で使用したエンジンに近いものを用いることで、ある程度コストを抑えられる見込みです。

袴田:おっしゃるとおり、当社のOTV開発のコンセプトは、Mission 1および2で実証した技術を最大限活用することです。そのため、開発費はある程度必要となりますが、みなさまが想像するような長期的で莫大な金額が必要というわけではないと考えています。

野﨑:そもそも、なぜOTVが有用なのか、という点が重要です。OTVは月面着陸を行わず、月周回までしか到達しません。なぜそれが良いことかを説明する良い機会かと思います。例えば、燃料の観点では、月面着陸を行う場合に必要となる逆噴射用の燃料が不要であることから、燃料消費を抑えられるという大きなメリットがあります。

そうすると、浮いた燃料の分だけ多くの荷物を運ぶことが可能になります。Telespazio社の衛星をはじめとする、数百キログラム級の重量物の輸送ニーズに効率よく応えることが可能です。

袴田:月着陸船では燃料のスペースを取るため、十分な荷物を載せられません。また、(月周回軌道と月面着陸の輸送を同時に行おうとすると)月周回軌道への輸送のためには特殊な軌道に投入する必要があるため、その後着陸を行う軌道への投入のため、より多くの燃料を使用する必要が生じ、結果的に着陸時の積載量が減少してしまいます。当社のビジネスとしてもメリットが少ないため、(月軌道のみに輸送を行う)OTVを活用して効率的に大きな重量を適切な周回軌道に投入するサービスが必要になります。

野﨑:現在、地球の周りには1万基近い衛星が回っており、さらに増加が予想されています。一方で、月の周りには現在6基しか衛星がありません。月周回での衛星ニーズは非常に高く、まだまだ参入の余地があるので、この機会を活かして、多くの衛星を輸送していきたいと考えています。

袴田:通信衛星や測位衛星、さらに月面活動が増えるに従いその状況をモニタリングする宇宙状況認識用の衛星など、多くの種類の衛星が必要になると考えられます。これから衛星の需要は大幅に増えるのではないでしょうか。

野﨑: OTVに対する取り組みに対しては意欲的に考えています。

質疑応答:「CLPS」の応札状況について

袴田:これまでにもいくつか提案活動を繰り返してきましたが、直近では、NASAのタスクオーダー1件が未発表の状態です。それがいつ公表されるかの情報は、まだ得られていません。さらにその次にもう1件、CP-32が発表されることを想定しています。

質疑応答:2027年3月期の売上計上見通しについて

今井:「決算について、今回下方修正となった28億円分の売上高は来期2027年3月期に計上する見通しでよろしいですか?」というご質問です。

野﨑:今回繰り延べられたものがいつ計上されるかについては、基本的には来期を目指したいと考えています。しかし、現時点では確約することは難しく、場合によっては一部が再来期に計上される可能性もあります。その先まではあまり想定していませんが、来期か再来期あたりでの計上となるのではないかと考えています。

これは、当社が採用している原価回収基準に基づくものです。例えば、今回発注を遅らせたものが来期以降に発注されれば、来期以降、売上が計上されることを期待できると考えています。

質疑応答:宇宙戦略基金の収益計上について

今井:「JAXAから支給される最大200億円の宇宙戦略基金は、2029年の打ち上げに向けて、徐々に補助金が営業外収益として計上されるという理解でよろしいですか?」というご質問です。

野﨑:表中の帯は、売上あるいは補助金が営業外収益として計上される期間を示していると考えていただければ、間違いないと思います。帯の長さは、契約してからミッションが完了するまでの期間です。

完了とは、月面着陸を達成し、その後のさまざまなアクティビティを終え、完了宣言を行うまでの期間を指します。この期間にわたって、売上や収益が計上され続けることになります。そのため、ご質問についてはご理解に間違いありません。この表でも2029年頃までの期間が示されていますが、以上のような背景があります。

質疑応答:衆議院選挙後の高市政権への期待と宇宙産業への補助金制度について

今井:「衆議院選挙を経た高市政権への期待と、企業から見た補助金や制度の課題について教えてください」というご質問です。

袴田:先日の衆院選で、高市政権が非常に大きな支持を得ました。これにより、高市政権のテーマの1つである安全保障や宇宙を含めた危機管理投資がさらに加速していくのではないかと感じています。

衆院選前のことですが、日本成長戦略会議において航空宇宙分科会が2025年1月に開催され、私も産業界の代表として提言する機会をいただきました。その中で、特に政府調達、つまりアンカーテナンシーによって月輸送の支援を本格的に検討していただけるよう、当社から提案を行いました。

宇宙産業では政府調達が衛星を中心に進んでおり、防衛省が顧客として動き始めている一方で、月探査に関しては現状では進んでおらず、空白の状態となっています。

月への輸送に関しては、売上が立ちにくい分野と捉えられるかもしれませんが、この事業を担う企業は非常に限られています。当社としては、月輸送が非常に外貨を稼ぎやすい事業領域であると認識しており、日本政府からのアンカーテナンシーを出すことで、さらに外貨を稼ぐことができ、良いサイクルを築けるのではないかと考えている、というような提案を行ってきました。

野﨑:当社の売上はドル建て契約です。つまり売上計上は円ではなくドルで行われており、世界各国から売上を得るというのが当社の特徴です。NASAのCLPSは一種のアンカーテナンシーで、政府あるいはNASAが直接顧客としてサービスを購入する契約を結び、企業に発注を行っていますが、日本にはこのような仕組みがまだ存在しません。

袴田:宇宙戦略基金などはあくまでも研究開発の補助金であり、輸送契約ではありません。そのため、着陸船開発の一部補助に留まり、売上に計上しづらい仕組みです。当社としては、政府にスペースの一部を輸送契約を締結して購入していただき、残りのスペースの販売で、先述のESAなどの諸外国の宇宙機関や民間企業に対して着実に外貨による売上を獲得していく方針です。

野﨑:NASAの「CLPS」などでは発注が行われ、当社のMission 3も売上に計上されています。ESAの契約も同様に売上を計上しています。一方で、JAXAや日本政府からの補助金は営業外収益として計上されるため、それを売上に足すかたちでプロジェクト収益として示している、という状況です。(日本政府も)他と足並みをそろえた発注が増えることで、産業全体がさらに盛り上がると考えています。

袴田:あらためて、そういった提言を行いつつ、政府内で議論が加速することを期待しています。

質疑応答:適切な為替の水準について

野﨑:現在の為替水準についてですが、当社はコスト面ではドル、ユーロ、円などがあり、売上もドルベースであるため、ナチュラルヘッジが効いている状態です。円安と円高のどちらに傾いても、売上とコストが両方増減するため、円安と円高のどちらか一方が良いというわけではありません。

ただ、一般論として円安傾向が続く中、海外からの調達が多いことから、過度な円安は当社にとって悪い状況だと思います。

袴田氏からのご挨拶

袴田:本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。また、多くのご質問をいただき感謝申し上げます。このようにインタラクティブにお話しできることは、当社にとっても非常に良い機会だと思っていますので、引き続きこのような機会を設けていきたいと思います。

実は、この環境での実施が本日最後となります。すでにお知らせしているとおり、オフィスの移転を計画していますので、次回からは新しいセッティングでお届けする予定です。引き続きよろしくお願いします。

当社としては、今後も気を引き締めて、しっかりとMission 1およびMission 2の知見を活かして、次のミッションの成功に向けた技術開発を進めていきます。また、事業開発については、日本国内およびグローバルでしっかりと推進し、事業の成長を一層図りたいと考えています。引き続き温かいご支援を賜りますよう、よろしくお願いします。本日は誠にありがとうございました。

配信元: ログミーファイナンス

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