IIF Research Memo(5):ヘルスケアソリューション事業及び在宅サービス事業を展開(3)

配信元:フィスコ
投稿:2025/12/29 13:05
*13:05JST IIF Research Memo(5):ヘルスケアソリューション事業及び在宅サービス事業を展開(3) ■インターネットインフィニティー<6545>の事業概要

3. セントワークスを中核とするDXソリューション構想
2025年4月にM&Aによりセントワークスが加わったことで、これまで抽象的であった中期経営計画内のDXソリューション構想が具体性を持ち、成長戦略の実行可能性が大きく高まったと弊社では見ている。従来は2025年問題、すなわち後期高齢者の増加に伴う社会保障費のひっ迫への対応を主眼にレコードブック事業を推進していたが、今後は2040年問題、すなわち介護人材の不足と生産性向上がより深刻な課題となる。

同社はこの問題を中長期的な経営リスクかつ新たな成長機会と捉え、中規模介護事業者を対象としたDXによる業務効率化、特にノンコア業務の削減を主眼とする「DXソリューション事業」を中期経営計画の中核に据えている。ノンコア業務の効率化は現場運営を大きく改善し、介護現場の負荷軽減とサービス品質確保を両立させる手段として有効である。

2040年問題は、65歳以上の人口がピークに達することで介護・医療需要が一段と増加する一方、生産年齢人口は縮小し介護人材が不足する構造的な問題として認識されている。既に介護現場では人員確保が難しく、1人当たりの業務負担が増大している状況にあり、今後はサービス提供体制の維持が困難となる事業者が増えると想定される。こうした環境下で求められるのは、人材確保に加え、限られた人員でサービスを維持するための「業務効率化」であり、とりわけノンコア業務の削減が重要となる。現状の対策は身体介護や機能訓練などコア領域に偏っているものの、実際には書類作成や利用者管理、請求処理などノンコア業務の負荷こそが業務全体の品質を左右しやすい。同社自身の介護運営経験からも、ノンコア業務の効率化が現場課題の解消に直結するという認識が強い。

介護現場では多数のシステムが導入されているが、それぞれが分断されておりデータ連携が不十分であることが業務煩雑化の要因となっている。同社は、導入率が高く業務の中枢を担う「請求ソフト」を統合の起点とすることが最も効率的であると判断した。とりわけ中規模介護事業者では、複数拠点・複数サービスの管理が必要となる一方、専任スタッフが十分に確保できず、SaaSの乱立がかえって運営負荷を高める構造的課題がある。そのため、DXによる業務改善の効果が最も大きく、事業者側のニーズも高い領域だといえる。

こうした背景の下、同社がセントワークスを取得した理由は、中規模介護事業者向けに強みを持つ請求ソフト「SuisuiRemon」の存在にある。同ソフトは複数拠点の情報・数字管理、債権管理、実績管理などの機能を備えており、同社のDX構想における基幹システムとして適合性が高い。加えて、セントワークスは中規模介護事業者に対する顧客基盤を持ち、同社が目指すDXソリューションに必要な要件である「請求ソフトであること」「中規模介護事業者向けに強みを保有すること」を満たしている。これにより、同社グループの介護運営ノウハウとシステムの融合が実現し、ノンコア業務の大幅削減による生産性向上が期待される。

同社が目指すDXソリューション事業の全体像は、「SuisuiRemon」を中核とするシステム群を様々な外部サービスと連携させ、AIエージェントの活用や業務標準化を通じてノンコア業務の削減を実現するという方向にある。介護業界は一般企業に比べてDXが遅れており、各種SaaSのAPI連携も十分に進んでいない現状があるため、同社はまず会計や人事・勤怠など各種SaaSとのAPI連携を強化し、可能な領域から業務の自動化・効率化を図る方針である。一方で、APIではフルオート化が難しい業務についてはBPaaSを用いて包括的に補完する戦略をとり、現場負担を多角的に軽減する体制を整備する。これにより、介護現場は利用者支援など品質向上につながるコア業務に集中できる環境へと移行可能になる。将来的にはM&Aやサービス領域の拡張を通じ、「SuisuiRemon」を起点とした中規模介護事業者向けの包括的な経営支援プラットフォームを構築する計画であり、API連携とBPaaSの両輪によるシステム統合戦略がその基盤となる見通しである。

さらに、2035年3月期を見据え、DXソリューション事業の収益規模拡大を想定しており、システム開発や機器販売、保守サービス、コンサルティング、さらにはノンコア業務のBPOなど、多様な提供ソリューションを拡充していく方針である。同社は長期的に同事業をグループの主力事業へ成長させ、2040年問題の解決に寄与するとともに、持続的な企業価値向上につなげる構想を示している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木 稜司)

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