STG Research Memo(3):マグネシウムダイカスト製造の技術優位性を生かし、高付加価値製品にシフト

配信元:フィスコ
投稿:2025/12/25 11:03
*11:03JST STG Research Memo(3):マグネシウムダイカスト製造の技術優位性を生かし、高付加価値製品にシフト ■事業概要

STG<5858>は、軽量化金属部品の製造加工事業を単一のセグメントとして展開している。事業の中核は、実用金属で最も軽いマグネシウムを中心に、アルミニウムも取り扱う製造加工であり、金型の設計・製造、金属部品の鋳造、機械加工、ショットブラスト、仕上げ、化成処理、塗装、組立までを一貫して行う体制を特徴としている。同社は、マグネシウム合金部品を中心とした電動車軽量化ソリューションを戦略ドメインと定め、製品の徹底した軽量化を追求する製造メーカーなどの顧客からの需要に対応している。2025年3月期における売上高のうち、マグネシウムダイカストが51%、アルミニウムダイカストが39%を占めた。マグネシウム部品を採用する工業製品の長期的な拡大を見越し、マグネシウム部品売上高を重要な成長指標として位置付ける。用途としては、完成車メーカー向けの自動車部品向けの供給が最大だが、足元では、収益力を向上させるために、ミラーレスカメラなどの高付加価値商品へシフトを推し進めている。フルサイズミラーレスカメラは日本メーカー製が全世界のほとんどを占め、サプライヤーも日本のごく限られた数社に集中しており、同社の収益源の1つとなっている。

同社の競争優位性は、マグネシウムダイカストの製造技術にある。マグネシウムは軽量である反面、発火しやすく成型加工が難しい素材であり、複雑な形状の部品を製造するには高度な技術が求められるため、同分野は参入障壁が高い。同社は、取り扱いが難しいマグネシウムビジネスに早くから参入し、長年の経験と独自のノウハウを蓄積している。特に、マグネシウム粉塵爆発対策として独自の湿式集塵機を開発し特許を取得している点など、安心安全な生産体制が秀でている。この技術的優位性とコスト低減のノウハウにより、従来の主力素材であったアルミニウムと比較して高い利益率を実現している。

同社は、金型設計から最終検査までを一括して行う一貫生産体制を敷くことで、採算性の向上に努めている。特に、2D・3D CADを用いた金型設計においては、「抜き勾配ゼロ」を実現する高い技術力を有しており、後加工(二次加工)の工数を大幅に削減し、部品を低コストで提供することが可能となっている。製造工程において、金型製造、塗装、組立といった一部の工程は採算性や製品品質を考慮して外注も行っているが、金型製造と塗装・組立はマレーシア工場で行っている。今後はこれまで以上に組立工程に注力し、高付加価値なビジネスを推進する考えである。金属の腐食を防ぐ化成処理はタイ工場でのみ行う工程である。同社は、顧客からの要求仕様を満たすだけでなく、製品の性能や機能を維持・向上させつつコストダウンを図る提案を積極的に行っている。

同社は、日本(大阪・静岡)、中国、タイ、マレーシアに生産拠点を展開している。成長戦略として、M&Aを積極的に活用しており、2021年3月に子会社化したSTX PRECISION (JB)の有する技術の相互補完を進めている。さらに2025年9月には、マレーシアのアルミニウムダイカストメーカーであるE-Castを子会社化した。E-Castはマレーシア北部のペナン州に拠点を持ち、大手グローバルメーカーが主要顧客である。品質水準は高く、ダイカスト部門において約50%の生産余力を有する。また、2024年12月期の売上高営業利益率は24.4%で、高い収益性を示している。この買収を通じて、既存のマレーシア子会社であるSTX PRECISION (JB)との連携も進め、グループ全体での柔軟な生産体制と稼働率の最適化を図る。同社は、アジアを中心に海外事業展開を行うことで、原材料調達や製品供給をグローバルに行い、連結グループ内で外貨建て資産・負債のバランスをとることで為替リスクの減少に努めている。生産能力増強を目的とした設備投資は、マレーシア工場でのダイカストマシン導入をはじめ継続的に実施している。タイにおいては、自動車部品が主力製品である、直近では長年培った精密成型技術力を、ミラーレスカメラなどの高付加価値カメラ部品に活用する形で、付加価値の高い分野にシフトしている。同社の技術力が評価され、日系カメラメーカーからの新規プロジェクトも受注し、今後、業績寄与が見込まれる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 星 匠)

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配信元: フィスコ

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