・企業を見る時に、外からは何をやっているか、よくわからない部署がある。リスクマネジメント、コンプライアンス、インターナルオーディット(内部監査)に関わる部署である。
・一般的な役割はわかっていても、その会社の中で具体的にどのような活動をしているのか。それが企業価値創造にどのように貢献しているのか。ふつうは、よく見えてこない。
・きちんと活動していれば、外部にみえてこなくてよい。そもそも守りの部署であるから、何も起きていないということはよいことであり、事が生じて、問題が外部に伝わってくるようでは困る、という見方もあろう。
・一方で、これらの組織が本来の役割を果たしておらず、甘い経営が容認されているとすれば、そのような会社には危なくて投資しにくい。何か事案が発生した時には、迅速にかつ的確に開示してほしい。
・企業の内部で収めてしまいえばよいと、開示しないことが多いかもしれない。手が打たれていればよいが、隠してばれないように済ませればという姿勢があるとすれば、その経営者の資質が問われる。
・筆者の体験から、いくつかの事例を想定してみたい。リスクマネジメント委員会は社内の部署を横断して設置され、メンバーも多様である。会社にとっての大型の案件は、経営会議や取締役会で当然議論され決定される。
・その前に、リスクマネジメント委員会で、案件のリスクアセスメントを行う。1)そのリスクは許容できるか、2)見逃しているリスクはないか、3)想定外のことが起きた時の対応策は十分かなどを検討する。
・コンプライアンス部では、規定に従って、社外のステークホルダーとのビジネス、社内の従業員の働き方などにルール違反はないか、をチェックしていく。コンプライアンス・マニュアルを整備して、必要に応じて更新し、役員を含む全社員への研修を行う。
・セクハラ、パワハラ、インサイダー取引、個人情報など、何らかの事案が発生したら、コンプライアンス委員会で外部弁護士の意見も参考に判断する。重大な事案となれば取締役会での議論も踏まえて、投資家にも開示する。
・内部監査部は何をやるのか。会社として、各事業部門や管理部門は、定められた方針や規定に従って業務を行っている。定められた業務マニュアルがきちんと設定されているか。マニュアルや管理規定に従って、各部門は自らきちんと業務を実行しているか、を内部監査部が監査する。
・当たり前だが、各部門は自らルールに従って業務を行っている。そこにルールを逸脱した行為はないか。社内ルール違反はないか。法的な違反はないか。これらを自ら守っているかを監査するのが、内部監査である。内部監査部門が各業務部門の管理業務を代行するわけではない。現場がきちんと実行しているかをチェックするのである。
・どんな内容を重点項目として監査するのか。これを年間計画として定める。レポーティングライン(指示を受けて報告する相手)は社長と監査担当役員である。両者に二重に報告する仕組みである。
・社長は業務執行部門のトップであり、監査担当役員は社外監査役や社外監査等委員(取締役)である。当然、内部監査の内容は取締役会に報告され、課題があれば議題として審議される。
・では、内部監査の仕事は、実際どのように役立つのか。社長にとっては、現場の各部門がルールを守って仕事をしているかをチェックしてくれる。もし不十分な場合は、社長から指示が出せるので、現場にとっては強力な指示である。ルールの守り、ルールを改定することが速やかに進む。
・もし現場がルールを守らず、社長が動かない時でも、監査担当役員へのダブル報告であるから、取締役会で問題にすることができる。会社の規律やルールを守るという点で、内部監査の役割は大きい。
・では、この内部監査を、経営トップがどこまで重視しているか。トップとして経営するに当たって、内部監査の守りは大いに心強い。監査担当役員も現場の業務執行の細かいルールをチェックしてくれるのは、監査の実効性を上げるのに役立つ。
・この内部監査部門に、十分働けるだけの人材を配置しているか。ここは企業によって温度差がある。どこも人材不足に悩んでいる中で、適材適所の人材を配置してほしい。
・監査法人は監査品質を重視する。内部監査においても、表面的にみるか、深く突っ込んでみるかによって、内部監査の質は変わってくる。ここもリスクアプローチで、重要度のランク付けが必要である。さらに、品質とは別に、監査価値が問われる。
・会社が業務を的確に遂行し、ルールがきちんと守られているのであれば、業務のPDCAを回す上でリスクが低減する。早めの対応が業務の効率と価値を上げる。
・社長は安心して自らの戦略遂行をリードできる。よって企業価値の向上に貢献する。企業価値の向上に、内部監査がどのくらい貢献しているか。ここを何らかの形でKPI化して社内でマネージしてほしい。
・通常の会社説明会で、内部監査について質問する機会はほとんどない。統合報告書では、内務監査に関する自社の個性を記述してほしい。つまり、どんな点を重視して実行しているかについて知りたい。
・それがリスクプロファイルにどう結びついているかが分かれば、会社の価値創造にも自信を持つことができよう。守りあっての攻めである。そのバランスに注目して企業を選別していきたい。
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