新技術立国構想の本丸、株高エネルギー蓄積中の「R&D」関連株 <株探トップ特集>

配信元:株探
投稿:2025/12/10 19:30

―高市政権は研究開発投資増大へ旗幟鮮明、理化学機器・計測機器の需要拡大に期待―

 高市政権が「新技術立国」の実現に向け、イノベーション人材の育成を含め、科学技術領域での戦略的な支援の強化に乗り出している。経団連も政権側の姿勢に呼応し、官民一体で研究開発投資を拡大すべきとする緊急提言を行った。従来から日本では公的セクターによる研究開発投資が少ないことが指摘されていただけに、国策で進められる投資拡大策は、理化学機器や計測機器などを製品群に持つ「R&D(研究開発)」関連株の追い風となりそうだ。

●R&D投資拡大でイノベーション促進へ

 11月28日に開かれた政府の総合科学技術・イノベーション会議で、高市首相から基礎研究への投資を大幅に拡充するよう関係閣僚に指示があった。海外に比べ研究開発力が低迷している現状を打破し、日本の研究力を高める方針で、2026~30年度の政策指針となる第7期「科学技術・イノベーション基本計画」策定に反映する構えだ。また、経団連は12月8日、科学技術立国の実現に向けた緊急提言を公表。価値創造人材の育成や研究開発投資の拡大に必要な改革案を提示した。

 経済成長率を左右するものとして、労働力(人口増加)、資本ストック(設備投資増加)、TFP(生産性向上)の3要素が挙げられる。日本の場合、高度成長期には人口増加や設備投資の寄与が大きかったが、成熟経済になると生産性向上が不可欠になる。先進国のなかでも際立って経済成長率が低い日本経済では、生産性の改善が課題となっている。生産性を向上させる要素には技術革新・進歩があり、技術革新を促すためには、研究開発投資が求められることとなる。

 企業にも同じことが言える。企業の成長率の要因は人員増加、設備増加、生産性向上に分解でき、将来の飯のタネを見つける研究開発は重要な要素となる。研究開発によって付加価値を生み出せれば、それに見合った利益が獲得でき、業績は拡大することになる。資金力を持つ大手にとどまらず、研究論文を通じ学術的に多大な貢献をする企業は国内に数多く存在する。

 一般に研究開発費は継続的に発生するものであり、その成果は遅れて発現する特徴がある。業績に反映されるにはタイムラグと波(サイクル)があり、直線的な成長に寄与するというわけではない。研究開発型企業のなかには現在の業績が芳しくなくても、将来に大きく羽ばたく可能性を秘めるところもあるはずだ。もちろん、科学技術分野での研究開発投資の増加そのものは、理化学機器や計測機器などの需要拡大に直結する。これらの点を踏まえつつ、グローバルで躍動が期待されるR&D関連企業をピックアップしていく。

●島津やリガクHDなどに注目

 島津製作所 <7701> [東証P]は創業150年を迎え、社員からノーベル賞受賞者が誕生するなど京都発の研究開発型企業として知られている。「科学技術で社会に貢献する」を社是とし、日本初・世界初の製品開発でも多くの実績がある。液体クロマトグラフ、質量分析システム、ガスクロマトグラフなどの計測機器が主力だが、医用機器、産業機器、航空機器にも展開、隠れた防衛関連でもある。ライフサイエンス、医療テック、グリーン(GX)、マテリアル、インダストリーを重点領域に、海外事業の拡大とアフターサービスの収益化を図る方針だ。ROE(自己資本利益率)は10%を超えているが、更なる向上を目指している。

 浜松ホトニクス <6965> [東証P]は、光関連の研究開発型企業として著名であり、光電子増倍管を使ったスーパーカミオカンデなど先端学術分野でも貢献度が大きい。同社の機器を使った設備により、ヒッグス粒子やニュートリノなど関連する研究成果が得られ、日本人ノーベル賞受賞者の輩出の立役者となった。中期計画によると、28年9月期に売上高を2620億円(26年9月期予想は2220億円)、営業利益を336億円(同172億円)に伸ばす目標で、半導体とレーザー事業を成長ドライバーとして注力する方針。ROEを8%超に高める姿勢を示している。

 リガク・ホールディングス <268A> [東証P]は理科学機器の開発・製造・販売で社歴は長いが、昨年10月にIPOを果たした。X線回折、蛍光X線分析などX線技術を基盤に、大学・研究機関から産業分野など幅広い分野で活用される多目的分析機器、半導体の品質テスト工程で利用される半導体プロセス・コントロール機器、部品・サービスの3事業に展開。今期からスタートした中期経営計画では、年平均売上高成長率約10%を目指しており、売上高対比での研究開発費については約9%(24年12月期は7.5%)に引き上げる方針。次世代半導体向け計測装置の販売も開始し、キオクシアホールディングス <285A> [東証P]傘下企業への納入が決まるなど今後の収益貢献が見込まれる。

 日本電子 <6951> [東証P]は、電子顕微鏡の開発・製造から、理科学・計測機器、産業機器、医用機器に展開。半導体製造用フォトマスク・レチクル作成に使われる電子ビーム描画装置など産業機器が利益面では大きく貢献している。30年3月期を最終年度とする中期経営計画では、半導体とライフサイエンスを重点領域に設定。両分野の成長と理科学・計測機器の収益性向上を目論んでいる。また、収益性改善、資本効率向上、株主還元強化により、ROE15%以上とする目標を掲げる。今年のノーベル化学賞を受賞した北川進・京都大学特別教授の研究を支援しており、同じく支援しているリガクHD傘下のリガクとともに京大と共同研究組織の設置に関する協定を締結している。

 堀場製作所 <6856> [東証P]は、創業者が学生ベンチャーとして立ち上げた分析・計測機器メーカー。自動車排ガス測定装置でブレイクし、長らく稼ぎ頭だったが、足もとでは先端材料・半導体部門が収益の牽引役となっている。ガス・流体分析、固体・粒体分析、液体・バイオ分析、データサイエンス・AI・IoTというコア技術を応用。今期は売上高の8%近くを研究開発費に充てるなど、R&D重視の経営姿勢が新製品開発・新事業展開の基盤となっている。水素・カーボンリサイクル、バイオ・検査におけるソリューション、半導体製造工程での計測・制御など新規事業を拡大させ、ROE12%以上を目指す中長期経営計画を推進中だ。

 シスメックス <6869> [東証P]は血液や尿など検体検査機器の世界的大手。ヘマトロジー分野(血球計数検査)での世界シェアは50%を超える。健康診断の際の血液・尿などが同社の機器で検査・分析されているのだが、試薬やサービスなどアフターサポートが発生するため、機器納入後も継続的な収益寄与が期待できることがポイントだ。学術情報提供やサポートで検査の質の向上も図っている。成長戦略として、インドや中南米、中東など新興国での販売強化、手術支援ロボットやデジタル医療システムなど新規事業の拡大を進める。34年3月期に売上高1兆円以上(26年3月期予想5100億円)、営業利益率20%以上(同14.9%)とする目標だ。

 共和電業 <6853> [東証S]はひずみゲージで高シェアを誇り、自動車や土木、インフラ関連に加えて航空宇宙分野などでの研究開発を支える。8月の株主優待制度発表後、株価は大きく水準を切り上げた。直近では航空宇宙関連での販売が増加し、鉄道やダム、防衛関連での大口案件も売り上げ増加に寄与。中期経営計画では最終年度の27年12月期に売上高170億円(25年12月期予想158億円)、営業利益17億円(同14億円)とする目標を掲げ、車両試験データのモニタリングや構造物の老朽化監視などでのクラウドサービスの拡大に取り組む構えだ。



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