豪ドル
RBA(豪中銀)は11月4日の会合で政策金利を3.60%に据え置くことを決定しました。RBAによる利下げは25年2月以降3カ月ごと2会合に1回のペースで実施されてきましたが、それが崩れました。
豪州の7-9月期CPI(消費者物価指数)トリム平均値は前年比3.0%と、前期の2.7%から上昇率が高まり、RBAのインフレ目標レンジ(2~3%)の上限に到達しました。そのことについてRBAは25年11月会合の声明で「一部は一時的な要因によるもの」と指摘。「最近のインフレに関するデータは、経済に依然としてインフレ圧力が幾分残っている可能性を示している」としつつ、「慎重な姿勢を維持し、データの変化に応じて見通しを更新していくことが適切」と改めて表明しました。
RBAの追加利下げはあと0回か1回と市場は予想しています。今後発表される豪州の経済指標の結果を受けて追加利下げ観測が高まる場合、豪ドルにとってのマイナス材料になりそうです。
豪ドル/米ドルについてはFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策にも影響を受けると考えられます。FRBが利下げを継続する場合、RBAの追加利下げ観測が高まったとしても、豪ドル/米ドルは底堅く推移する可能性があります。
日銀はいずれ追加利上げを行うと考えられます。ただ、実際に追加利上げが実施されたとしても、その次の利上げ観測が市場で高まらなければ、豪ドル/円はそれほど下落しないかもしれません。
豪ドルには投資家のリスク意識を反映しやすいという特徴があります。日米など主要国の株価が堅調に推移するなどしてリスクオン(リスク選好)が強まる場合、豪ドルのサポート要因になりそうです。
******
【豪ドル/NZドル】
市場では、RBAの追加利下げは上述のとおり0回か1回と予想されている一方、RBNZ(NZ中銀)はあと1回利下げを行うとの見方が優勢です。市場のRBAとRBNZの金融政策見通しから考えれば、豪ドル/NZドルは引き続き底堅く推移する可能性があります。
豪ドル/NZドルが下落基調に転じるには、RBAの追加利下げ観測が高まるか、RBNZの追加利下げ観測の後退(あるいは両方)が必要かもしれません。
NZドル
RBNZ(NZ中銀)は10月8日の政策会合で0.50%の利下げを行うことを決定。政策金利を3.00%から2.50%へと引き下げました。RBNZによる利下げは24年8月以降8回目、利下げ幅は合計3.00%になりました。
10月会合の声明では、「中期的にインフレ率が目標中間値の2%付近で持続的に安定するために必要な場合、政策金利のさらなる引き下げを検討する」とされ、今後追加利下げが行われる可能性が示されました。
OIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場では次回11月26日の会合で0.25%の追加利下げが行われるとの見方が優勢です。そのことはNZドルにとってのマイナス材料になると考えられます。一方で市場では、RBNZの利下げサイクルは11月をもって終了との観測があります。仮に11月会合で利下げが実施されたとしても、利下げ打ち止めの観測が高まる場合にはRBNZの金融政策面からはNZドルに対してそれほど下押し圧力は加わらない可能性があります。
カナダドル
BOC(カナダ中銀)は10月29日の政策会合で0.25%の利下げを行うことを決定。政策金利を2.50%から2.25%へと引き下げました。BOCによる利下げは2会合連続、24年6月以降で9回目。24年6月以降の利下げ幅は合計2.75%になりました。
10月会合でのBOCの声明や会合後のマックレム総裁の会見では、24年6月に開始された利下げが打ち止めとなる可能性が示されました。声明は「インフレと経済活動が10月の予測とおおむね一致して推移する場合、現在の政策金利は、構造調整期にある経済を支援しつつ、インフレ率を2%近辺に維持するうえでおおむね適切な水準にあると考えている」と表明。「見通しに変化が生じれば、我々は対応する用意がある」と付け加えました。
市場では、BOCによる利下げサイクルは終了との見方が優勢です。今後発表されるカナダの経済指標でその観測が一段と高まれば、BOCの金融政策面からみれば、カナダドルはサポートされやすくなると考えられます。FRBが今後さらに利下げを行う場合、米ドル/カナダドルは上値が重い展開になりそうです。
トランプ政権による対カナダ関税がどうなるのかにも注目です。トランプ政権は8月1日、カナダに対する追加関税の税率を25%から35%へと引き上げました。ただし、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)準拠品については関税を引き続き免除。トランプ大統領は10月25日、追加関税の税率をさらに10%引き上げる意向を表明しました。仮に関税率がさらに10%引き上げられることになれば、カナダ景気の下押し要因になる可能性があります。
メキシコペソ
BOM(メキシコ中銀)は24年3月に利下げを開始し、25年9月まで11回合計3.75%の利下げを行いました。11月3日時点の政策金利は7.50%です。
25年9月会合のBOM声明では、8月会合と同じく「政策金利のさらなる調整を検討する」と表明されました。BOMは今後さらに利下げする可能性があります。一方でこれまでのBOMによる大幅利下げの影響は今後さらに出てくると考えられます。また、メキシコのCPI(消費者物価指数)で食品・エネルギー・農畜産物を除いたコアは、5月以降5カ月連続でBOMのインフレ目標(3%)の許容レンジ(2~4%)を上回っています。BOMの利下げサイクルは停止される時期が近づきつつあるかもしれません。今後BOMが利下げを停止すれば、メキシコペソにとってのプラス材料になると考えられます。
トランプ政権による対メキシコ関税がどうなるのかにも注目です。トランプ政権はメキシコからの輸入品に対し、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)準拠品を除いて原則25%の関税を3月から課しています。対メキシコ関税の税率は11月1日から30%へと引き上げられる予定でしたが、交渉時間を確保するためとして数週間延期されました。米国とメキシコが通商交渉で合意して関税の引き上げが撤回される(あるいは税率が30%よりも低くなる)場合、メキシコペソのサポート要因になりそうです。
著者のおすすめ
最新人気記事
-
来週の株式相場に向けて=年内最後のFOMCに関心、ブロードコム決算... 12/05 17:40
-
東京株式(大引け)=536円安と4日ぶり反落、主力株に利益確定売り膨らむ 12/05 16:13
-
来週の主なマーケットイベント 12/05 16:00
-
リガクHDが3連騰、次世代半導体向け計測装置の販売開始を引き続き材料視 12/05 09:26
-
「ロボット」が2位に急浮上、米政府がロボティクス分野への支援を検討... 12/05 12:21
新着ニュース
新着ニュース一覧-
今日 11:30
-
-
今日 10:00
-
今日 09:00

