S&P500月例レポート(2025年10月配信)<前編>
S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。
【THE S&P 500 MARKET:2025年9月】
米国市場の概況
S&P500指数は(一本調子ではないものの)上昇基調を維持しました。同指数は9月中に8回、終値で最高値を更新しました(取引時間中の最高値は6699.52、終値での最高値は6693.75)。この結果、終値での最高値更新は年初来で28回、2024年11月5日の米大統領選挙以降では38回となりました。
ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)も上昇基調を維持して終値での最高値を6回更新し(取引時間中の最高値は4万6714.27ドル、終値での最高値は4万6397.89ドル)、最後の更新は最終営業日の30日でした。ダウ平均は2025年8月に入って(ようやく)今年最初の最高値更新を記録しましたが(8月中にもう一回更新)、それ以前に更新したのは2024年12月4日で4万5014.04ドルを付けました。
9月の相場のモメンタムは金利動向へとシフトしましたが、市場関係者は依然としてS&P500指数の騰落率を測る際には関税発表直後の4月8日に付けた安値(4982.77)を起点としています。4月8日時点の年初来騰落率は15.28%の下落でしたが、同日を起点とした9月末現在の騰落率は34.23%上昇となりました。また、同期間に11セクター全てが上昇し(パフォーマンスが最高となったのは情報技術で60.60%上昇、最低だったのは生活必需品で4.04%上昇)、418銘柄が上昇し(89銘柄が50%以上上昇)、85銘柄が下落しました(36銘柄が10%以上下落、16銘柄が20%以上下落)。投資家は14兆8230億ドルを手にしました(とはいえ、政府の税収は増えません。第3四半期の税収には1900億ドルと見込まれる「1つの大きくて美しい法案(OBBB)」に盛り込まれた企業向けの税制優遇が反映されています。個人は2026年2月、3月、4月に推定1500億ドルとみられる追加の税還付を「自分の取り分」として得られる予定で、これらのお金は消費に回されて経済を下支えすると予想されます)。
4月8日以降、S&P500指数は25回最高値を更新しました。トップニュースで取り上げられることはありませんでしたが、企業業績が引き続き相場の下支え役として大きな役割を果たしました。S&P500指数構成企業の2025年第2四半期の営業利益(前年同期比9.7%増)と売上高(同5.1%増)はいずれも、四半期ベースでの過去最高を更新する見通しです。企業は関税コストの大部分を吸収していますが、近いうちに消費者に転嫁することを予告しています。今後の買いを支える材料は2025年下半期の企業業績ですが、最近承認された歳出法案での2025年の法人減税と2026年の個人減税に後押しされ、さらなる過去最高の更新が予想されます。
雇用も依然として高水準を維持しています(失業率はわずかに上昇していますが、米連邦準備制度理事会(FRB)の経済見通しでは2025年末の失業率は4.5%と6月公表の前回予測から変わっていません。なお、2026年は前回6月の4.5%から4.4%に低下、2027年も同様に4.4%から4.3%に低下、また新たに公表された2028年は4.2%となっています)。このため、活発な個人消費が続き、経済を下支えすると予想されます。
10月のモメンタムを展望すると、重要なテクニカル面の問題として売りが低水準にとどまる(S&P500指数は2025年9月22日に付けた終値での最高値から0.08%しか値下がりしておらず、ダウ平均も9月最後の取引日を最高値で終えています)ことが指摘されており、資金流入による株価収益率(PER)の押し上げに注目が集まっています。
政府機関の閉鎖が続けば(本レポート執筆時点で、一部機関が閉鎖に追い込まれています)、新聞報道では大きく取り上げられ、また10月3日発表予定の雇用統計も公表が延期される見通しですが、実際の相場への影響はそれほど大きくはないとみられます。(それ以上に?)ファンダメンタルな観点から言えば、FRBが10月28-29日と12月9-10日の政策会合で0.25%の利下げを決定することのほうがコンスタントに市場に影響を及ぼすでしょう。さらに注目度は下がるとはいえ、関税問題も市場の変動要因と言えます(政策変更の速さを考慮すると、このような判断は賢明ではないかもしれません)。
しかし、過去の経験(少なくとも私のS&P社勤続年数は49年に近づいています)から判断すると、10月中旬までには市場関係者の関心は企業業績に集中し始めるはずです。その頃には大手金融機関の業績発表が始まるからです(10月14日にはシティグループ<C>、ゴールドマン・サックス・グループ<GS>、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー<JPM>、ウェルズ・ファーゴ<WFC>、さらにはジョンソン・エンド・ジョンソン<JNJ>が業績発表を予定しています。S&P500指数構成企業の2025年第3四半期の営業利益は四半期ベースでの過去最高となる見通しで、前期比4.3%増、前年同期比12.8%増が見込まれています。自社株買いも銘柄レベルでのEPSの押し上げに寄与する見通しです)。
9月にS&P500指数は3.53%上昇しました(8月は1.91%上昇、7月は2.17%上昇)。11セクターのうち7セクターが上昇しましたが(8月は9セクター、7月は6セクターが上昇)、前月から一転して値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回りました。9月は248銘柄が値上がりし、255銘柄が値下がりしました(8月は337銘柄が値上がり、166銘柄が値下がり)。9月のパフォーマンスが最高となったのは情報技術で7.21%上昇し、年初来では21.75%の上昇となりました。パフォーマンスが最低だったのは素材で2.31%下落しましたが、年初来では7.73%の上昇となっています。S&P500指数は年初来で13.72%上昇し(配当込みのトータルリターンはプラス14.83%)、全11セクターが上昇し、314銘柄が値上がり、189銘柄が値下がりとなりました。年初来パフォーマンスが最高となったのはコミュニケーションサービスで23.69%上昇し、ヘルスケアが1.20%の上昇で最低となっています。
10月の株式市場では、当初は米政府機関の閉鎖問題に市場の関心が集まるでしょう。財政法案やつなぎ予算に関する協議は継続されるものの、カギを握るのは年末に期限を迎える医療費負担適正化法(ACA、通常オバマケア)に基づく医療保険の補助金延長の問題とみられます。市場が注視している経済指標に関しても、10月3日発表予定の月次の雇用統計は政府機関の閉鎖という事態になれば発表が延期される可能性があります(政府発表の全てのレポートの公表が遅れる可能性も)。市場は、15日発表予定の消費者物価指数(CPI)、16日発表予定の生産者物価指数(PPI)、28-29日開催予定のFOMCや、30日発表予定のGDP統計にも注目しています。また、FRBが雇用統計に対する注目を一段と強めており(結果、市場関係者の関心も高くなっている)、週次の新規失業保険申請件数(毎木曜日の朝8:30に発表予定)も影響力が大きい(そして市場を動かす)指標となっています。
インデックスの動き
○9月は、企業業績、関税、9月(実施済み)/10月/12月の0.25%の利下げに対する確信の高まりが、金融面のニュースと市場で最大の関心事となりました。複数のFRB理事の交代の可能性も注目を集めました。企業利益は引き続き予想を上回っており、第2四半期は過去最高を更新する見通しです。一部の小売り企業は2025年の通期ガイダンスを引き上げています。2025年下半期の業績予想も底堅く、やはり過去最高を更新すると予想されています。第2四半期の売上高も予想(または非公式の予想)を大幅に上回っており、四半期ベースで過去最高を更新する見通しです。関税の企業利益への影響は全体として限定的と見られ、企業は関税コストの大部分を吸収していますが、多くの企業が、将来的に値上げを通じて顧客にコストを転嫁する意向を表明しています。
○9月にS&P500指数は3.53%上昇しました(配当込みのトータルリターンはプラス3.65%)。8月は1.91%上昇(同プラス2.03%)、7月は2.17%上昇(同プラス2.24%)、6月は4.96%上昇(同プラス5.09%)でした。第3四半期の過去3ヵ月では7.79%上昇(同プラス8.12%)、年初来では13.72%上昇(同プラス14.83%)、2025年9月末までの1年間では16.07%上昇(同プラス17.60%)となりました。2024年通年では23.31%上昇(同プラス25.02%)、2023年は24.23%上昇(同プラス26.29%)、2022年は19.44%下落(同マイナス18.11%)でした。
○マグニフィセント・セブン(エヌビディア<NVDA>、マイクロソフト<MSFT>、アップル<AAPL>、アルファベット<GOOG>/<GOOGL>、アマゾン・ドット・コム<AMZN>、メタ・プラットフォームズ<META>、テスラ<TSLA>で構成され、S&P500指数の時価総額の34.5%を占める)は、2025年9月のS&P500指数のトータルリターンの64%を占め、7銘柄を除くと同指数のトータルリターン(3.65%)は1.33%でした。2025年4月8日に付けた直近安値からのトータルリターンでは指数全体の48%を占め、7銘柄を除くと同指数のトータルリターン(35.07%)は18.28%でした。年初来のトータルリターンでは指数全体の41%を占め、7銘柄を除くと同指数のトータルリターン(14.83%)は8.69%でした。
○9月の市場は終値での最高値を8回更新しましたが(終値での最高値更新は年初来で28回、2024年11月5日の米大統領選挙以降では38回)、値下がり銘柄数が増加して値上がり銘柄数を上回り、248銘柄が値上がりし、255銘柄が値下がりしました。8月は337銘柄が値上がり、168銘柄が値下がり、7月は279銘柄が値上がり、222銘柄が値下がりとなりました。過去3ヵ月(第3四半期)では311銘柄が値上がり、192銘柄が値下がり、年初来では314銘柄が値上がり、189銘柄が値下がりとなりました。2024年は332銘柄が値上がり、169銘柄が値下がりしました。9月は21営業日のうち13営業日で上昇し(8月は21営業日のうち10営業日で上昇)、1%以上変動した日はありませんでした(8月は4営業日で1%以上変動し、そのうち3営業日が上昇、1営業日が下落)。年初来では43営業日で1%以上変動(21営業日が上昇、22営業日が下落)しています。2024年は50営業日で1%以上変動しました(31営業日が上昇、19営業日が下落)。9月は11セクターのうち、7セクターが上昇しました(8月は11セクターのうち9セクターが上昇)。
○S&P500指数の時価総額は2兆2690億ドル増加して(8月は1兆400億ドル増加)、57兆460億ドルとなり、年初来では7兆2420億ドルの増加となりました。2024年に時価総額は9兆7660億ドル増加、2023年は7兆9060億ドル増加、2022年は8兆2240億ドル減少しました。
○9月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は0.69%となり、8月の0.77%から低下しました(7月は0.63%、6月は0.83%、5月は1.09%、4月は3.21%、3月は1.71%、2月は1.09%、1月は0.91%)。年初来では1.23%となりました。2024年通年は0.91%、2023年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.41%)。
○9月の出来高は前月比15%増加(営業日数調整後)しました。8月は同9%減少でした。前年同月比では37%増加となりました。2025年9月までの12ヵ月間では前年比24%増加しました。2024年通年では前年比2%減、2023年は同1%減、2022年は同6%増でした。
9月は21営業日中1%以上変動した日はありませんでした。8月は21営業日中1%以上変動した日は4日ありました(上昇が3日、下落が1日)。2%以上変動した日もありませんでした。年初来では、1%以上変動した日数は186営業日中43日(上昇が21日、下落が22日)、2%以上変動した日数は12日(上昇が6日、下落が6日)となりました。2024年通年では、1%以上変動した日数は50日(上昇が31日、下落が19日)、2%以上変動した日数は7日(上昇が3日、下落が4日)でした。
○9月は21営業日中2日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上変動した日はありませんでした。8月は21営業日中4日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上変動した日はありませんでした。年初来では日中変動率が1%以上となったのは85日、日中変動率が2%以上となったのは22日、日中変動率が3%以上となったのは7日でした(2025年3月9日には日中変動率が7%を超えました)。2024年通年では、日中変動率が1%以上となったのは83日、日中変動率が2%以上となったのは11日でした。2023年は日中変動率が1%以上となったのは113日、日中変動率が2%以上となったのは13日でした。
過去の実績を見ると、9月は44.9%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.23%、下落した月の平均下落率は4.70%、全体の平均騰落率は1.09%の下落(月間としては最もパフォーマンスが悪い月)となっています。2025年9月のS&P500指数は3.53%の上昇でした。
10月は56.1%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.25%、下落した月の平均下落率は4.52%、全体の平均騰落率は0.50%の下落となっています。
ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は4万6397.89ドル(終値での過去最高値)で月を終えました。9月には終値での最高値を6回更新し(年初来で8回、4万6397.89ドル)、8月の終値4万5544.88ドルから1.87%上昇(配当込みのトータルリターンはプラス2.00%)しました。8月には終値での最高値を2回更新し、7月の終値4万4130.98ドル(0.08%上昇、配当込みのトータルリターンはプラス0.16%)からは3.20%上昇(配当込みのトータルリターンはプラス3.42%)しています。2025年第3四半期の3ヵ月では5.22%上昇(同プラス5.67%)、年初来では9.06%上昇(同プラス10.47%)、過去1年間では9.61%上昇(同プラス11.50%)しました。2024年通年では12.88%上昇(同プラス14.99%)、2023年は13.70%上昇(同プラス16.18%)、2022年は8.78%下落(同マイナス6.86%)でした。
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