平成實録・大家地獄變⑤
大家三郎さんの8階建てワンルームマンション『キャッスル大家』は、いよいよ完成した。見上げるばかりの堂々たる豪勢なマンションだ。まわりの平屋建てや二階建てアパートを見下してるみたひだ。
だがだか、そのマンションは、オープニングに際して、入居者は、・・・・・・・・・一名!!!!!!
やられた!大企業が、個人をだました瞬間!
マーケッテイングもへったくれも。要は、建てればよい。
やられた!!これをば、最単純に言い切れば、美味い話にはウラがあるか。80部屋あるならば、やっぱ8割ぐらひの入居者を事前に確保しておかにゃ。
これは、俺殿(オイドン)には、身につまされる話だ。
いま、ほんまビルヂングは、ほぼ満室。それでも、固定資産税に始まり、この異常気象による防水工事、火災防止装置、セコム社による点検安全管理契約、三井住友海上の火災保険・施設賠償保険などなどランニング・コストは、年々かさむ一方だ。
さふいふ現役大家の眼で見ると、大家三郎さんのケースは、絶望を通り越して、・・・・・・・地獄。個人自営業者の煉獄。
4億円の借金ですぞ。
仲悪かったけど、それでも新築オープニングの翌日ぐらひには、congratulation!を言いに行ったところ、大家三郎さんは、マンションの脇の植え込みの縁石に腰かけて、すわりこみ、頭を垂れていた。俺殿(オイドン)には、その瞬間に理解できた。
店子を集められなかったんだな。と、だけど、まさか入居者が一人とはなぁ。
「いやぁ~、素晴らしゐビルだなー。」とお世辞を言ふと、顔を上げて俺殿を見た。そして、また地面を向いて、うなだれていた。そして、これが大家三郎さんと俺殿の最後の別れとなった。一週間もしなひうちに、大家三郎さんは、死んだ。
以上、大倒建託の大家殺しの顛末でした。合掌礼拝。