2月26日の海外株式・債券・為替・商品市場
2016/02/27 07:49 JST
◎NY外為:ドル、12月以来の大幅高-米GDPが予想上回る
26日のニューヨーク外国為替市場でドルが上昇。ドル指数は2カ月ぶりの大幅高となった。市場予想を上回る経済指標が相次ぎ、米国の成長見通しが強まった。
ドルは円に対して、1カ月ぶりの3日続伸となった。米商務省が発表した第4四半期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み、年率)改定値は前期比1%増と、速報値の0.7%増から上方修正された。
1月の米個人消費支出(PCE)は8カ月ぶりの大幅増加となった。PCE価格指数は伸び率が2014年10月以来の最大となった。
中国の景気減速やユーロ圏および日本のインフレ低迷で米国の経済成長は押し下げられるリスクがあるとの懸念が広がっていたが、この日の統計内容はその懸念を緩和する一助となった。
ステート・ストリート・グローバル・マーケッツの北米マクロ戦略責任者、リー・フェリッジ氏は「米金融政策当局の見通しと市場が織り込んでいる見通しは信じ難いほど一段とかい離しているようだ」と述べ、「ドルにとっては強材料だが、ボラティリティの高い通貨にとっては弱材料だ」と続けた。
ニューヨーク時間午後5時現在、ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.7%上昇して1231.01。昨年12月17日以来で最も上げた。
ドルは対円で0.9%上昇して1ドル=114円。ドルは対ユーロで0.8%上昇して1ユーロ=1.0934ドル。
米金融政策当局は入手する経済データを精査し、景気が追加利上げを受け入れられるかどうかを見極めようとしている。米国の政策金利は昨年12月、約10年ぶりに引き上げられた。
トレーダーは年末までの追加利上げを53%織り込んでいる。昨年12月31日時点では93%が織り込まれていた。
フランクリン・テンプルトンの債券担当シニアバイスプレジデント兼ディレクター、ロジャー・ベイストン氏は「米金融政策当局が慎重なペースで短期金利を引き上げる軌道にあることが示される兆候はすべてドルにとって支援材料となろう」と述べ、GDP統計は「実際のところはおおむね熱過ぎず、寒過ぎずといった内容だが、リセッション懸念をもたらすほど寒くはなかった」と続けた。
◎米国株:下落、物価上昇の兆候で追加利上げ早まるとの観測
26日の米株式相場は下落。経済指標で物価が上昇しつつある兆候が示されたことから、追加利上げが従来予想より早まるとの観測が強まり、景気に対する楽観が弱まった。ただ週間ベースでは2週連続の上昇となった。
この日はもみ合う展開が続いた。経済成長やインフレの指標を受けてドルが上昇し、海外で大きく事業を展開する一部企業の株式が売られた。コカ・コーラなど生活必需品株が安い。一方で経済成長をめぐる懸念の後退で素材株は上昇。産銅大手フリーポート・マクモランは4.4%上げた。
S&P500種 株価指数は前日比0.2%安の1948.05。ダウ工業株30種平均は57.32ドル(0.3%)下げて16639.97ドル。ナスダック総合指数は0.2%上昇した。
ライノ・トレーディング・パートナーズ(ニューヨーク)のチーフ株式ストラテジスト、マイケル・ブロック氏は「市場には強い確信があるわけではない」とし、「これはレンジ相場にとどまることを示している。原油相場の安定化や中国人民銀行総裁の発言、米国内総生産(GDP)、個人消費支出(PCE)を受けて相場は上昇した。GDPは全くひどい内容というわけではなく、PCEもやや改善した」と述べた。
この日発表された1月の米PCE統計では、金融当局がインフレ目標の基準とするPCE価格指数が前年比で1.3%上昇と、2014年10月以来の大幅な伸びとなった。PCEも8カ月ぶりの大幅増加となった。また10ー12月(第4四半期)のGDP改定値は、速報値から上方修正された。
こうした経済指標を受けて、先物トレーダーらが織り込む年内の利上げ確率は上昇。6月利上げの確率は前日の24%弱から35%に高まった。また12月利上げの確率は52%(前日36%)に上昇した。株価が大きく下げていた今月11日の時点では、12月利上げの確率は11%に低下していた。
ソーンバーグ・インベストメント・マネジメントの株式トレーディング責任者、トーマス・ガルシア氏は「金融当局がインフレ率に注目しているのは間違いない。徐々に上昇しつつあるようだ」と指摘。「問題は経済がそれほど好調ではないということだ。経済が減速しつつある状況でのインフレ率上昇は望ましくない」と続けた。
中国人民銀の周小川総裁は26日、中国当局には金融政策面で行動する余地が残されていると述べた。
S&P500種は今週1.6%上昇。特に銀行やテクノロジ-関連が上げを主導した。今週は原油相場も安定化の兆しを見せた。
シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ指数(VIX)は3.7%上昇し19.81。月初来では約2%低下となっている。
S&P500種の業種別10指数は6指数が下落。公益事業株の指数は2.7%安とここ3カ月で最大の下げ。債券利回りの上昇で配当の魅力が薄れた。生活必需品株は5週間ぶりの大幅安。一方で素材や金融、エネルギーの指数は上げた。
◎米国債:下落、経済成長やインフレの指標が予想上回る
26日の米国債相場は反落。この日発表された経済指標が相次いで市場予想を上回ったことを受けて、利上げの道筋に関する予測を見直す動きが広がった。
米金融政策期待に最も敏感とされる2年債利回りは昨年12月以来の大幅上昇となった。市場では利上げの織り込みが進み、2年債と10年債の利回り差は2007年以来の最小となった。
3月15、16両日に開催される次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、市場は金融政策の見通しを検証している。先物市場の動向は次回の利上げが2017年後半になるとの見方を反映している。FOMCが昨年12月に公表した予測では、2016年に4回の利上げが示唆されていた。
1月の米個人消費支出(PCE)統計では金融当局がインフレ目標の基準とするPCE価格指数が前年比で2014年10月以来の大幅な伸びとなった。これを受けて市場ベースのインフレ期待指標は上昇した。ただ、PCE価格指数は当局目標の2%をなお下回っている。
ユナイテッド・ネーションズ・フェデラル・クレジット・ユニオン(ニューヨーク)の最高投資責任者(CIO)、クリストファー・サリバン氏は「米国のリセッション(景気後退)に関する大げさ過ぎるほどの不安はある程度和らいだのではないか」と指摘。「米国の成長ペースはよく言っても緩慢という状況だが、今四半期は昨年第4四半期よりは若干良好となりそうだ」と述べた。
ブルームバーグ・ボンド・トレーダーによると、ニューヨーク時間午後5時現在、10年債利回り は前日比5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の1.76%。同年債(表面利率1.625%、2026年2月償還)価格は14/32下げて98 24/32。
2年債利回りは7bp上昇の0.79%と、終了ベースでは1日以来の高水準。
米経済指標は価格指数や経済成長、消費支出、消費者マインド指数がすべてエコノミスト予想を上回った。
ジェフリーズ・グループのマネーマーケット・エコノミスト、トーマス・サイモンズ氏は「経済指標の全体的なトーンがやや変化しており、それが売りの要因となっている」と述べた。
シティグループの米経済サプライズ指数は3日連続で上昇してマイナス21.4と、年初来の高水準付近となっている。同指数は依然マイナス圏にあり、統計が予想より悪いことを示唆している。今年の最低はマイナス55.7。
ブルームバーグがまとめたオーバーナイト・イン デックス・スワップ(OIS)データによると、デリバティブ(金融派生商品)市場では年末までの利上げ確率は53%として織り込まれており、前日時点の38%から上昇した。この算出は次の利上げ後に実効フェデラルファンド(FF)金利が0.625%になるとの仮定に基づく。
米財務省が実施した7年債入札(発行額280億ドル)の結果は最高落札利回りが1.568%となった。同入札は前日から延期されていた。投資家の需要を測る指標の応札倍率は2009年以来の低水準だった。
◎NY金:下落、米GDP上方修正で-週間は今年初の2週連続安
26日のニューヨーク金先物相場は下落。週間ベースでは今年に入って初の2週連続安となった。昨年10-12月(第4四半期)の米実質国内総生産(GDP)改定値が速報値から上方修正されたことを受けて、逃避の買いが減退した。
TDセキュリティーズ(トロント)の商品戦略責任者、バート・メレク氏は電話インタビューで、「GDPは予想よりも少し強かった。ヘッドラインの数字はかなり良好に見える」と指摘。「金は少し下方向に調整した。恐らくドルに反応した面もある」と述べた。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は前日比1.5%安の1オンス=1220.40ドル。週間では0.8%安。前週は0.7%下げていた。
銀先物5月限は3.2%下落の14.714ドル。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のプラチナとパラジウムも値下がりした。
◎NY原油:週間では8月以来の大幅高-産油国協議への期待で
26日のニューヨーク原油先物市場ではウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物が反落。週間では上昇し、昨年8月以来の大幅上昇となった。米国の燃料需要に拡大の兆しが見えてきたほか、産油国による生産水準の維持協定へ進展がみられるとの観測が背景。ベネズエラ石油相は前日、産油国が3月会合の開催地を協議していると述べた。
エネルギー関連の商品に重点を置くヘッジファンド、アゲイン・キャピタル(ニューヨーク)のパートナー、ジョン・キルダフ氏は「市場には心中穏やかではない売り持ちの投資家が大勢いて、石油輸出国機構(OPEC)とロシアの協議に関するコメントに反応している」と解説。「これまでに何度も繰り返されたことだが、それでも市場はこうした話に反応し続ける」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物4月限は前日比29セント(0.88%)安い1バレル=32.78ドルで終了。週間では約11%の値上がり。ロンドンICEのブレント4月限は19セント下げて35.10ドル。
◎欧州株:続伸、決算を好感-追加刺激策の観測も追い風
26日の欧州株式相場は上昇。指標のストックス欧州600指数は続伸となった。企業決算が好感されたほか、主要中央銀行が追加刺激策を打ち出すとの観測も手掛かり。
イタリアの石油会社ENIは5.1%上昇。同社の探査・生産部門の業績が予想を上回ったのに加え、生産量が5年ぶり高水準に増えたことが買い材料。ドイツの化学品メーカー、BASFは3%値上がり。増配方針が好感された。スペインの風力タービンメーカー、ガメサ・コルポラシオン・テクノロヒカは5.8%上昇。好調な売り上げを理由に、利益目標の達成時期を2016年に1年前倒しする方針を示した。
ストックス600指数は前日比1.5%高の331.54で終了。商品高を背景に、鉱業株とエネルギー株の上げが目立った。同指数はこの日2.1%高から約0.9%高に伸びが鈍化する場面もあったが、ドイツのインフレ統計発表後は再び加速。ドイツとフランス、スペインの2月のインフレ率はいずれも市場予想に届かず、欧州中央銀行(ECB)が刺激策を拡大する根拠が強まった。
ルツェルン州立銀行(スイス)のトレーダー、ベンノ・ガリカー氏は「政策絡みのイベントが多数予定され、追加刺激策が打ち出される確率もかなり高いことから、相場は一段高となり得る」と発言。「ひどい状況だった24日の後に売りが膨らむ可能性があったが、相場が大きく戻したことはこうしたイベントに向けて期待が幾分高まりつつあることを示す」と語った。
中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁はこの日、中国当局には景気刺激に向けさらなる緩和余地があると述べた。ECBは3月10日に金融政策を決定する。
ギリシャのアテネ総合指数は4.8%高と、この日の西欧市場の主要株価指数の中で上昇率が首位だった。ユーロバンク・エルガシアスとアルファ銀行がそれぞれ14%急伸した。
個別銘柄では、英銀ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)が7.1%の大幅安。8年連続で通期赤字となった同行は、復配が当初の計画よりも遅れるとの見通しも示した。英ブリティッシュ・エアウェイズの親会社であるIAGは3.1%下げた。通期利益がアナリスト予想の上限に届かなかった。
◎欧州債:周辺国の国債中心に上昇-物価下落でECB期待膨らむ
26日の欧州債市場ではポルトガルやスペインなど、いわゆる周辺国を中心に国債が上昇。ドイツとフランス、スペインのインフレ統計で、デフレ回避に取り組む欧州中央銀行(ECB)が直面する難題が浮き彫りとなったことが背景にある。
ポルトガル10年債利回りは約3週間ぶりの低水準を付けた。同年限のスペイン国債は5日続伸。同国の2月の物価下落率は昨年9月以来の大きさだった。スペインでは政治的行き詰まりが昨年12月の総選挙以降続くものの、国債需要は下支えされている。
ドイツとフランスでも2月のインフレ率は市場予想を下回った。独連邦統計局がこの日発表した同月の独消費者物価指数(CPI)は欧州連合(EU)基準で前年同月比0.2%低下。ブルームバーグがまとめたアナリスト調査では変わらずが見込まれていた。
欧州債の指標とされるドイツ10年債は週間ベースで上昇。市場混乱の際に恩恵を受ける同国債だが、欧州株が週ベースで続伸しても値上がりした。これは、3月10日のECB定例政策委員会で緩和拡大が決まる可能性が大きな原動力になっている状況を示唆すると、ノルデア銀行のチーフストラテジスト、ヤン・フォンゲリッヒ氏(ヘルシンキ在勤)はみている。
フォンゲリッヒ氏は「投資家はECB緩和の観測がある中では国債に弱気になるのに消極的だ」とし、「期待を上回る手段を講じるのは困難だろう。だが、ECBの能力を過小評価すべきではない。期待が高かった過去の多くの局面も何とか切り抜けてきたからだ」と語った。
ロンドン時間午後4時49分現在、スペイン10年債利回りは前日比3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の1.58%。これは4日以来の低水準。前週末比では13bp下げた。同国債(表面利率2.15%、2025年10月償還)価格はこの日、0.265上げ105.085。
イタリア10年債利回りも3bp下げて1.48%。同年限のポルトガル国債利回りは一時25bp低下し3.09%と、5日以来の低さとなった。
ドイツ10年債利回りは1bp上げて0.15%。今週は5bp下げ、24日には昨年4月以来の低水準となる0.13%を付けた。5年物利回りはマイナス0.377%まで低下し、これまでの最低を記録した。フランス5年債利回りも過去最低となるマイナス0.209%まで下げた。
ブルームバーグ抜粋