日経夕刊（２６日付）の記事より。

●『わがままのすすめ』（日興コーディアル証券国際市場分析部長　馬渕治好氏）

　クリスマスディナーデートの季節が終わった。

　悲喜こもごものドラマがあっただろう。男性側には、何を食べたいかと聞いて「あなたと一緒ならどこでもいいわ」と返ってくる殊勝な女性が好みという向きがどうも多いようだが、「ソースがくどくなく、素材を生かしたフレンチに行きたい」などと、好みをわがままに言ってくれた方が、悩みが少なくてよいのではないか。「わがまま」に悪いことというニュアンスが強いが、度が過ぎなければ、自分に希望を明確に伝えることで、話が前に進み発展するという利点がある。

　昨今の証券税制の議論では、主役となる国民のわがままが聞こえてこない。本来「貯蓄から投資へ」の流れのなかで、証券市場はどうあるべきかの徹底的な議論が、国民の資産形成と企業の資金調達の両面からあってしかるべきで、それに基づき税制も検討されるべきだ。

　議論が沸き起こらないのは我々証券界にも責任の一端があるが、国民がどうしたいのかのわがままが聞こえないなか、「軽減税率の延長は金持ち優遇との批判を浴びるだろう」との推測で検討がされており、また財務省案と金融庁案の間での妥協に意味があるのかどうかもわからない。

　一方で、投資家の間に、良い意味でわがままなものが広がってきている。

　一例が、SRI（社会的責任投資）など、必ずしも利潤追求目的と限らない投資手法だ。SRI以外にも、「この企業・産業を応援したい」「この新興国の発展や環境汚染防止に資金を供給したい」など、非経済的な価値観からの投資が増えている。

　こうした投資が広がれば、証券市場は単なる資金供給のツールとしてではなく、それ以上の役割も担えるよう、発展できるだろう。投資家がそれぞれの価値観に基づいて、わがままな投資を行なうことが、投資先にその価値観を伝えることになるからだ。

※来年はわがままな投資家になりましょう。くれぐれも間違ってわがままな投機家にならないようにご注意ください。